【特集 特別座談会】「SDGsから未来の海を考える」後編1/2

この情報は、北海道漁業協同組合連合会(JF北海道ぎょれん)からの提供です。

前後編を、それぞれ2回にわたって公開します。
以下、後編1/2回目をお届けします。

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<出席者>
さかなクン / JF全漁連 魚食普及推進委員
渋澤温之氏(以下、渋澤専務) / パルシステム生活協同組合連合会 代表理事専務 
三浦秀樹氏(以下、三浦常務) / 全国漁業協同組合連合会 常務理事 
安田昌樹氏(以下、安田専務) / 北海道漁業協同組合連合会 代表理事専務(進行)

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▶【特集 特別座談会】~前編1/2~
https://sakanadia.jp/torikumi/hokkaido_zadankai22_01/
▶【特集 特別座談会】~前編2/2~
https://sakanadia.jp/torikumi/hokkaido_zadankai22_02/

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-安田専務 
次は三浦常務、全国様々な規模・漁業形態の漁協があると思いますけれども、漁村コミュニティの中核的役割を持つ漁協の機能がどうなっているのか、漁村コミュニティの必要性などお話いただければと思います。

-三浦常務 
漁村コミュニティと漁協の機能、少し難しい話題ではありますが、まず沿岸漁業では共同漁業権漁業があり、定置網漁業があり、養殖業があり、そして知事許可・大臣許可の許可漁業があります。本当に多種多様な漁業というものが、複層的に海を使いながら行われている。そうしたなかを円滑に漁師が魚を獲っていかなければならず、そのためには漁業調整というのが必要不可欠です。

漁業者自らが作った組織である漁協は、そうした調整や管理の役割も担ってきたのです。正に地域コミュニティと一体となって海の役場的役割を果たしてきたのです。一方で漁村には獲った魚を流通・加工する仕組みが必要です。漁協というのはこうした水産関連企業も含めたその漁村地域全体で発展してきたのだと私は思っています。

そうしたなか、近年は大手企業による効率化を進めたノルウェーの漁業が絶賛されています。ですが、集約化・効率化だけを進め、沢山獲れ、儲かれば良いじゃないかという考え方だけでは日本の漁業・漁村は成り立たないと思います。

先ほどお話しした通り、日本では北から南まで多数の漁業者が生活をしながら、それぞれの地域を支え、漁業・魚食文化を築き上げてきました。そこがノルウェーとは違うというのに、先ほど渋澤専務が言っていただいた日本の地域や歴史、食文化等も含めて守るためにどうするか、正にそうしたことが重要だと私は思っています。

そして安田専務が話した「生業(なりわい)」ですね。漁業と生活、これが一体となってそこで行われることで、国境監視や海難救助等、漁業が持っている多面的機能が発揮されているのだと思います。

それとまた津々浦々、漁業が行われている場所ごとに産地市場があることで皆さんがどこに行っても鮮度の良い刺身を食べられる。これほどまでに日本全国どこでも新鮮な魚が食べられる国は他にありますか?日本が世界に誇る流通と食文化の賜物だと思います。
寿司文化などをはじめ、世界に誇れる日本の食文化を守ることが漁協の機能の一つでもあると思っていますし、さらに中小の漁業を守ることが地域を守ることに繋がる。また、地域を守ることが中小の漁業者を守ることに繋がっていくのだと我々はそう思っています。

-安田専務 
次にまたSDGsの話を。1番から17番まで色々な目標があるなかで特に直結しやすいのは14番の「海の豊かさを守ろう」、あるいは13番の「気候変動に具体的な対策を」だと思います。例えばこういうことに対する考え方や具体的な実践例、今後の活動への想い、というのがあれば順番にお話しいただければ、と思います。

-さかなクン 
はい、地元千葉県館山市の定置網漁業の船に乗せていただいて、入ってくるお魚を見続けてきましたが、年々南方のお魚が多くなってきたことに驚きます。特にアイゴです。

さかなクン

どうしてアイゴが増えたのだろうと思い、研究者の先生方から色々な見解を学ばせていただくと、やはり水温が上がってきているのが原因であるとのこと。

本来、温かい海域で暮らすアイゴ。以前は地元の定置網にしばしば入網する程度でしたが、今では一年中たくさん入網するようになりました。様々なサイズが入り、夏季には卵巣や精巣でお腹がとっても大きな成魚も入ることから、繁殖していることが分かります。海藻をたくさん食べ、棘に毒を持つため厄介者扱いされますが、せっかく獲れておいしいお魚ですので、今後しっかりと食用として活用されることを願っています。

また、ムラサキウニやガンガゼなどのウニ類が各地で磯焼けの原因として駆除の対象にまでされていることについて、「おいしいムラサキウニがなぜ」と思いました。ところが実際に浜で割っていただくと、中身がスカスカでビックリしました。

そうしたなか、岩手県の洋野(ひろの)町では沿岸の岩盤に掘られた溝に昆布を繁茂させた「うに牧場」があり、「種市うに栽培漁業センター」の皆さまが1年間ほど育てられた稚うにを放して、昆布をたくさん食べさせてあげて、1年程してムラサキウニの身入りを良くして、出荷されています。

センター長さんに伺ったところ、「実はさかなクン、ウニは可哀そうなんです」と仰るんです。「え、なぜウニが可哀そうなんですか?」と聞いたところ、「実はウニは熊の冬眠と同じく、本来は冬眠する生き物なのですが、水温が上がってしまったから冬も冬眠できず活動し、少なくなった海藻も食べてしまう」とのこと。そういった悪循環でウニは益々厄介者扱いされてしまっているそうです。

どうしてそうなったか、しっかりと背景を伝えないまま報道などでアイゴやウニが悪者扱いされてしまうと、一般の方は「そんなに悪者なんだ」と認識してしまいます。また、クラゲやヒトデ、ナルトビエイなどが増えると深刻な漁業被害につながります。なぜ増えたか様々な要因があり、そのことをしっかりと学び、多くの方々に伝えていかなければ、と思います。

さらに、皆さまにお伝えしたいことは海洋プラスチックごみのことです。日本だけでなく世界中で年々増えてしまっており、2050年にはお魚の量よりも海洋プラスチックごみの量の方が多くなってしまうと考えられています。

プラスチックは捨てられるためにできたものではなく、私たちの生活にとって便利なものとして作られたものです。捨てられてしまうことによって悪者扱いされていますが、こうしたことを大人だけでなく、子どもたちにも分かってもらえるようにと「プラギョミ0(ゼロ)プロジェクト」という小冊子を(一社)SD BlueEarth・青い地球を育む会(※)で作りました。

一般社団法人SD BlueEarth・青い地球を育む会(※)発行の小冊子「プラギョミ0プロジェクト」

海で漂うプラスチックごみをキャラクター化し、「ペットウオ」や「ポリクラゲ」といった名前で楽しく覚えながら、ビーチクリーンでみんなで海・浜をきれいにし、SDGs14番の「海の豊かさを守ろう」に繋がっていければと願っております。

(※)(一社)SD BlueEarth・青い地球を育む会~SDGs14番「海の豊かさを守ろう」をはじめとして、SDGsが目標とする17項目の活動及び長期的な環境維持活動を目標とする一般社団法人。「さかなクンと手をつないで青い地球を未来へつなごう!」をテーマに海洋プラスチックごみ問題など、海とおさかなに関する環境課題の解決に向けて取り組んでいる。

-安田専務 
今のさかなクンの話を受けて私の方からSDGsへの取組について、我々北海道ぎょれんが色々な対策をしていこうとしているなかで、これから力を入れていくのは、リサイクルシステムの構築かと思っています。

JF北海道ぎょれんの安田昌樹専務

先ほどお話した脱・抑プラスチック運動と連動していますが、まずはプラスチック製の魚函です。この魚函を極力大事に使う、長く使う、もう駄目になったらリサイクルに乗せる、という取り組みを始めました。古くなった魚函を回収して、今はまずは買い物カゴとして製品化を行っています。

そして同じくプラゴミの削減ということで取り組んでいるのが刺網のリサイクルです。古くなって捨てる網、つまり廃網を回収してリサイクルし、衣類などの原料となる再生ペレットにする取り組みを行っています。

具体的に言うと釣り具用品メーカーのダイワさんでレインウェアを作ってもらったり、こちらは先の展開ですが、シューズメーカーのコンバースへ供給してスニーカーを製造してもらうなど、再生原料として色々なものを製造して、販売もしていただく。

こうしたことを通じて一般消費者の方にも海洋プラスチックごみやSDGsについて関心を持ってもらう良い機会にもなりますで、単なるリサイクルシステムの構築の他に、多くの人にそういった主旨を理解してもらう、そういった運動にも繋がるかと思っています。

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