JFレポート特集 【特集 特別座談会】「SDGsから未来の海を考える」後編1/2 2023.1.18 全国の漁連・漁協 印刷する この情報は、北海道漁業協同組合連合会(JF北海道ぎょれん)からの提供です。 前後編を、それぞれ2回にわたって公開します。 以下、後編1/2回目をお届けします。 * * * <出席者> さかなクン / JF全漁連 魚食普及推進委員 渋澤温之氏(以下、渋澤専務) / パルシステム生活協同組合連合会 代表理事専務 三浦秀樹氏(以下、三浦常務) / 全国漁業協同組合連合会 常務理事 安田昌樹氏(以下、安田専務) / 北海道漁業協同組合連合会 代表理事専務(進行) * * * ▶【特集 特別座談会】~前編1/2~ https://sakanadia.jp/torikumi/hokkaido_zadankai22_01/ ▶【特集 特別座談会】~前編2/2~ https://sakanadia.jp/torikumi/hokkaido_zadankai22_02/ * * * -安田専務 次は三浦常務、全国様々な規模・漁業形態の漁協があると思いますけれども、漁村コミュニティの中核的役割を持つ漁協の機能がどうなっているのか、漁村コミュニティの必要性などお話いただければと思います。 -三浦常務 漁村コミュニティと漁協の機能、少し難しい話題ではありますが、まず沿岸漁業では共同漁業権漁業があり、定置網漁業があり、養殖業があり、そして知事許可・大臣許可の許可漁業があります。本当に多種多様な漁業というものが、複層的に海を使いながら行われている。そうしたなかを円滑に漁師が魚を獲っていかなければならず、そのためには漁業調整というのが必要不可欠です。 漁業者自らが作った組織である漁協は、そうした調整や管理の役割も担ってきたのです。正に地域コミュニティと一体となって海の役場的役割を果たしてきたのです。一方で漁村には獲った魚を流通・加工する仕組みが必要です。漁協というのはこうした水産関連企業も含めたその漁村地域全体で発展してきたのだと私は思っています。 そうしたなか、近年は大手企業による効率化を進めたノルウェーの漁業が絶賛されています。ですが、集約化・効率化だけを進め、沢山獲れ、儲かれば良いじゃないかという考え方だけでは日本の漁業・漁村は成り立たないと思います。 先ほどお話しした通り、日本では北から南まで多数の漁業者が生活をしながら、それぞれの地域を支え、漁業・魚食文化を築き上げてきました。そこがノルウェーとは違うというのに、先ほど渋澤専務が言っていただいた日本の地域や歴史、食文化等も含めて守るためにどうするか、正にそうしたことが重要だと私は思っています。 そして安田専務が話した「生業(なりわい)」ですね。漁業と生活、これが一体となってそこで行われることで、国境監視や海難救助等、漁業が持っている多面的機能が発揮されているのだと思います。 それとまた津々浦々、漁業が行われている場所ごとに産地市場があることで皆さんがどこに行っても鮮度の良い刺身を食べられる。これほどまでに日本全国どこでも新鮮な魚が食べられる国は他にありますか?日本が世界に誇る流通と食文化の賜物だと思います。 寿司文化などをはじめ、世界に誇れる日本の食文化を守ることが漁協の機能の一つでもあると思っていますし、さらに中小の漁業を守ることが地域を守ることに繋がる。また、地域を守ることが中小の漁業者を守ることに繋がっていくのだと我々はそう思っています。 -安田専務 次にまたSDGsの話を。1番から17番まで色々な目標があるなかで特に直結しやすいのは14番の「海の豊かさを守ろう」、あるいは13番の「気候変動に具体的な対策を」だと思います。例えばこういうことに対する考え方や具体的な実践例、今後の活動への想い、というのがあれば順番にお話しいただければ、と思います。 -さかなクン はい、地元千葉県館山市の定置網漁業の船に乗せていただいて、入ってくるお魚を見続けてきましたが、年々南方のお魚が多くなってきたことに驚きます。特にアイゴです。 さかなクンどうしてアイゴが増えたのだろうと思い、研究者の先生方から色々な見解を学ばせていただくと、やはり水温が上がってきているのが原因であるとのこと。 本来、温かい海域で暮らすアイゴ。以前は地元の定置網にしばしば入網する程度でしたが、今では一年中たくさん入網するようになりました。様々なサイズが入り、夏季には卵巣や精巣でお腹がとっても大きな成魚も入ることから、繁殖していることが分かります。海藻をたくさん食べ、棘に毒を持つため厄介者扱いされますが、せっかく獲れておいしいお魚ですので、今後しっかりと食用として活用されることを願っています。 また、ムラサキウニやガンガゼなどのウニ類が各地で磯焼けの原因として駆除の対象にまでされていることについて、「おいしいムラサキウニがなぜ」と思いました。ところが実際に浜で割っていただくと、中身がスカスカでビックリしました。 そうしたなか、岩手県の洋野(ひろの)町では沿岸の岩盤に掘られた溝に昆布を繁茂させた「うに牧場」があり、「種市うに栽培漁業センター」の皆さまが1年間ほど育てられた稚うにを放して、昆布をたくさん食べさせてあげて、1年程してムラサキウニの身入りを良くして、出荷されています。 センター長さんに伺ったところ、「実はさかなクン、ウニは可哀そうなんです」と仰るんです。「え、なぜウニが可哀そうなんですか?」と聞いたところ、「実はウニは熊の冬眠と同じく、本来は冬眠する生き物なのですが、水温が上がってしまったから冬も冬眠できず活動し、少なくなった海藻も食べてしまう」とのこと。そういった悪循環でウニは益々厄介者扱いされてしまっているそうです。 どうしてそうなったか、しっかりと背景を伝えないまま報道などでアイゴやウニが悪者扱いされてしまうと、一般の方は「そんなに悪者なんだ」と認識してしまいます。また、クラゲやヒトデ、ナルトビエイなどが増えると深刻な漁業被害につながります。なぜ増えたか様々な要因があり、そのことをしっかりと学び、多くの方々に伝えていかなければ、と思います。 さらに、皆さまにお伝えしたいことは海洋プラスチックごみのことです。日本だけでなく世界中で年々増えてしまっており、2050年にはお魚の量よりも海洋プラスチックごみの量の方が多くなってしまうと考えられています。 プラスチックは捨てられるためにできたものではなく、私たちの生活にとって便利なものとして作られたものです。捨てられてしまうことによって悪者扱いされていますが、こうしたことを大人だけでなく、子どもたちにも分かってもらえるようにと「プラギョミ0(ゼロ)プロジェクト」という小冊子を(一社)SD BlueEarth・青い地球を育む会(※)で作りました。 一般社団法人SD BlueEarth・青い地球を育む会(※)発行の小冊子「プラギョミ0プロジェクト」海で漂うプラスチックごみをキャラクター化し、「ペットウオ」や「ポリクラゲ」といった名前で楽しく覚えながら、ビーチクリーンでみんなで海・浜をきれいにし、SDGs14番の「海の豊かさを守ろう」に繋がっていければと願っております。 (※)(一社)SD BlueEarth・青い地球を育む会~SDGs14番「海の豊かさを守ろう」をはじめとして、SDGsが目標とする17項目の活動及び長期的な環境維持活動を目標とする一般社団法人。「さかなクンと手をつないで青い地球を未来へつなごう!」をテーマに海洋プラスチックごみ問題など、海とおさかなに関する環境課題の解決に向けて取り組んでいる。 -安田専務 今のさかなクンの話を受けて私の方からSDGsへの取組について、我々北海道ぎょれんが色々な対策をしていこうとしているなかで、これから力を入れていくのは、リサイクルシステムの構築かと思っています。 JF北海道ぎょれんの安田昌樹専務先ほどお話した脱・抑プラスチック運動と連動していますが、まずはプラスチック製の魚函です。この魚函を極力大事に使う、長く使う、もう駄目になったらリサイクルに乗せる、という取り組みを始めました。古くなった魚函を回収して、今はまずは買い物カゴとして製品化を行っています。 そして同じくプラゴミの削減ということで取り組んでいるのが刺網のリサイクルです。古くなって捨てる網、つまり廃網を回収してリサイクルし、衣類などの原料となる再生ペレットにする取り組みを行っています。 具体的に言うと釣り具用品メーカーのダイワさんでレインウェアを作ってもらったり、こちらは先の展開ですが、シューズメーカーのコンバースへ供給してスニーカーを製造してもらうなど、再生原料として色々なものを製造して、販売もしていただく。 こうしたことを通じて一般消費者の方にも海洋プラスチックごみやSDGsについて関心を持ってもらう良い機会にもなりますで、単なるリサイクルシステムの構築の他に、多くの人にそういった主旨を理解してもらう、そういった運動にも繋がるかと思っています。 * * * 前後編を、それぞれ2回に分けてお届けしています。 ▶【特集 特別座談会】「SDGsから未来の海を考える」前後編で公開 ▶【特集 特別座談会】~前編1/2~ ▶【特集 特別座談会】~前編2/2~ ▶【特集 特別座談会】~後編1/2~ ▶【特集 特別座談会】~後編2/2~ JF全漁連漁協(JF)SDGs漁師北海道さかなクン全国の漁連・漁協全国の漁連・漁協のお知らせや活動について選り抜きの情報をお伝えします。このライターの記事をもっと読む
水産の大商談会「ジャパンインターナショナルシーフードショー」開催、1万1125人が来場 約380社が出展11月8日~10日の3日間、東京ビッグサイトで「第23回ジャパンインターナショナルシーフードショー」(主催:一般社団法人大日本水産会)が開催され、昨年度を上回る1万1125人が来場しました。 約1年半2021.11.12JFレポートJF全漁連編集部
富山県の漁師×地元靴下メーカーの共同開発で、靴下ブランド・PESCALLY(ぺスカリー)誕生この情報は、富山県漁協青年部連合会(JF富山漁青連)所属のシロエビ漁師によるプロジェクト「富山湾しろえび倶楽部」からの提供です。 * * * 地元富山県の靴下メーカー・助野株式会社から、「2023.8.2JFレポート全国の漁連・漁協
魚の祭典「Fish-1グランプリ」は大盛況!グランプリに輝いたのは毎年恒例となったJF全漁連主催の魚の祭典「Fish-1グランプリ」(「ジャパン・フィッシャーマンズ・フェスティバル2019」内)が11月17日(日)、東京・日比谷公園で開催されました。7回目となる今回2019.11.22JFレポートJF全漁連編集部
―海の豊かさを守るために― JF北海道ぎょれん、「2022年度全道なみまるクリーンアップ作戦」結果報告この情報は、北海道漁業協同組合連合会(JF北海道ぎょれん)からの提供です。 SDGsが掲げる目標のひとつである環境問題に対する取り組みです。 * * * 昨年から始まった「全道なみまるクリ2022.11.4JFレポート全国の漁連・漁協
JF京都、”食の世界遺産”に郷土食「うご」が登録されましたこのコラムは、京都府漁業協同組合(JF京都)の広報誌『京都府漁協だより』第36号(2022年1月1日発行)に掲載されたものです。 ▼Sakanadia関連記事 海洋高校生の岩ガキ—JF京都の取り組み—2022.2.17JFレポート全国の漁連・漁協
シーフード料理コンクール開催JF全漁連は、2019年12月7日(土)、東京・服部栄養専門学校にて第20回シーフード料理コンクールの実技審査・表彰式を開催しました。 シーフード料理コンクールは、新鮮な感性と豊かなアイディアを活かし2020.2.4JFレポートJF全漁連編集部
中止相次ぎレポート記事激減―こんな時は魚を食べて!漁師がつくる漁協(漁業協同組合、愛称はJF“じぇいえふ”といいます)の全国連合会であるJF全漁連は、日本の漁師さんたちの漁業経営をサポートするために、さまざまな活動を行っています。 3月は年度の終わり2020.3.17JFレポートJF全漁連編集部
【新人デビュー企画】広報の新人がJF全漁連を説明してみたこんにちは、Sakanadia編集部です。 JF全漁連にも、この春新入職員が入りました。 コロナ禍で新人研修がなかなか実施されず、入会後すぐ在宅勤務になってしまった彼ですが、時間をかけてしっかりとJF2020.9.25JFレポートJF全漁連編集部
組合学校が漁協見学、都市型漁業・漁協の取り組みを学ぶ漁業協同組合(JF)職員を養成する全国漁業協同組合学校(組合学校)が、晴天に恵まれた2022年5月18日(水)に万全の新型コロナウイルス感染症対策を講じ、今期初めてとなる見学研修のため横浜市漁業協同組2022.9.9JFレポートJF全漁連編集部
第44回全国海の子絵画展、28作品が特別賞受賞JF全漁連が毎年3月に開催している「全国海の子絵画展」。この絵画展は、小・中学生の皆さんが絵を描くことを通して、海に対する興味や、漁業に対する理解、夢をもって成長して欲しいという願いを込めて、19782022.3.17JFレポートJF全漁連編集部
将来の魚食プロ、魚をさばく! 長崎県漁青連「水産教室」を開催この情報は、長崎県漁業協同組合連合会(JF長崎漁連)からの提供です。 * * * 長崎県漁協青壮年部連合会(以下、長崎県漁青連)は、長崎女子短期大学の栄養士コース1・2年生を対象に、「水産2022.12.26JFレポート全国の漁連・漁協
「第21回シーフード料理コンクール」農林水産大臣賞など入賞作品が決定JF全漁連が開催する「第21回シーフード料理コンクール」(服部幸應審査委員長・服部栄養専門学校校長)の各賞が決まりました! ▶結果は特設サイトへ こちら 今回の募集テーマは「おいしいおうちギョ(魚)は2020.12.21JFレポートJF全漁連編集部