水産業の新戦略 流通改善で青森の高級魚「龍飛岬マツカワ」が寿司チェーンへ 2021.12.23 JF全漁連編集部 印刷する 写真左から、JF青森漁連の 天内(あまない)事業部流通課係長、「匠のがってん寿司」新三郷店古屋店長JF全漁連と青森県漁業協同組合連合会(以下、JF青森漁連)は、水産庁の「バリューチェーン改善促進事業」を活用して、生産、加工・流通、販売各段階の改善に取り組み、青森県産養殖魚の高級ブランド「龍飛岬(たっぴみさき)マツカワ※」を寿司チェーンへ流通させることを実現しました。 ※マツカワガレイ * * * 生産者から寿司チェーンまでの連携で弱点克服写真左から、龍飛ヒラメ養殖生産組合の伊藤さん、JF小泊の伊藤さん「龍飛岬マツカワ」は、青函トンネルから染み出る清浄な海洋深層水を利用し、陸上養殖されています。生産を担うのは地元漁業者らが構成する「龍飛ヒラメ養殖生産組合」。これまでウスメバルの養殖事業化など、他に類のない取り組みで成果を上げてきましたが、人手不足による脆弱な出荷・管理体制の改善が課題でした。 そこでJF青森漁連が、出荷・輸送体制の補強に取り組み、さらにJF全漁連が消費地での調整を担うことで、関東を拠点とするグルメ回転寿司チェーン「がってん寿司」の高級店舗である「匠のがってん寿司」の12店に、「龍飛岬マツカワ」を提供することができるようになりました。 JF青森漁連による生産・出荷・輸送の補強写真左から、JF青森漁連天内事業部流通課係長、「匠のがってん寿司」バイヤーの(株)アールディーシーの望月商品部課長、JF全漁連の西岡輸出・直販事業部長まず、JF青森漁連は生産体制を補強するため、龍飛の生産現場(養殖場)に加え、同じく「龍飛岬マツカワ」の養殖に取り組む小泊漁業協同組合(JF小泊)を出荷体制に組み込みました。2か所の生育状況や出荷日の作業量などを把握したうえで仕入れ先を振り分けます。 次に、本州最北の地の青森からの週3回のチルド輸送体制を構築しました。冬の津軽海峡は時化が多く、天然魚の水揚げが無い日もあります。そのような日は、生産地から青森市内までの輸送トラックが走りませんので、それをリカバーするためJF青森漁連が自社便を走らせ、消費地への安定供給を担います。 JF全漁連と「匠のがってん寿司」による流通・販売体制の構築JF青森漁連が出荷した「龍飛岬マツカワ」が東京に到着してからは、JF全漁連の出番です。「匠のがってん寿司」のオーダーに合わせ仕分け・デリバリーを行います。時にはJF全漁連が持つ販路を生かし、機動的に振り分け先を調整します。 そして、この流通体制に欠かせないのが、「匠のがってん寿司」の店舗とバイヤーの協力です。龍飛・小泊の2か所の生産現場に配慮し、より効率的な輸送を実現するため、使用尾数の事前オーダー制を採用しました。また、店舗では魚の取り扱いを熟知した職人が品質管理を徹底したうえで、調理とお客様への説明を担い、特徴的な「龍飛岬マツカワ」のストーリーとともに提供します。 「匠のがってん寿司」で「龍飛岬マツカワ」を調理このように、生産、流通、販売の各段階がそれぞれお互いの現場を思いやり、検討を重ねた結果、消費者のみなさまに価値ある「龍飛岬マツカワ」を堪能していただける体制が整いました。 担当バイヤーの(株)アールディーシーの望月商品部課長は、「高級魚龍飛岬マツカワの企画は、社内でも大変注目されている。毎年続けたいし、養殖メバルなど他の青森産品も扱いたい」とコメント。 JF全漁連は、この連携体制を生かし来年に向けてさらに改善を図っていきます。 JF青森漁連が対面で魅力をアピール「匠のがってん寿司」新三郷店で消費者に直接商品を紹介するJF青森漁連の天内事業部流通課係長JF青森漁連の天内事業部流通課係長は12月10日、「匠のがってん寿司」の新三郷店と錦糸町店に赴き、店内でお客様に対面で「龍飛岬マツカワ」を紹介しました。天内さんが「寒くなり、美味しい脂がのってきました!」と説明すると、客席から次々に注文が舞い込みました! 産地とお店が協力して「龍飛岬マツカワ」の価値を訴求することで、より臨場感のある情報を提供することができました。 「龍飛岬マツカワ」のにぎりこのほかに、本事業を活用して東京都漁業協同組合連合会(JF東京漁連)の「キンメダイ」が、「がってん寿司」の冬メニューに採用されており、「匠のがってん寿司」の期間限定キャンペーン「冬の贅尽くし」の二枚看板になっています。 【匠のがってん寿司】冬の贅尽くしキャンペーンページはこちら ※匠のがってん寿司のWEBサイトに記載の「松川かれい」は「龍飛岬マツカワ」のことです。 JF全漁連漁師東北JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む
開発によって激減した「桑名のハマグリ」を守る —JF赤須賀による資源回復の取り組み―三重県桑名市赤須賀地域は揖斐川、長良川、木曽川の木曽三川が伊勢湾に流れ込む河口域に位置しています。 木曽三川は豊富な栄養分を運んでくるため、赤須賀地域はハマグリ、ヤマトシジミ、シラウオなどが水揚げされ2024.5.21水産業の新戦略古江晋也(ふるえ しんや)
大阪湾で育てた「ぼうでのカキ」を消費者に ―JF西鳥取によるカキ養殖の取り組み―2016年に、波有手(ぼうで)浜と呼ばれてきた大阪府西鳥取漁港にカキ小屋が開店しました。そのカキ小屋で提供しているのは、目の前の海で育てられたカキです。大阪湾で育てられたカキをカキ小屋で府民が味わうの2023.6.5水産業の新戦略田口 さつき(たぐち さつき)
組合員同士の協力と対話で資源管理に取り組む「泉佐野のトリガイ」大阪府泉佐野市は、石桁網(いしげたあみ)漁が盛んな地域です。石桁網漁は、船で袋状の網の付いた鉄枠を引っ張る漁法で、海底に生息する魚や貝が網に入ります。2022.8.3水産業の新戦略古江晋也(ふるえ しんや)
JF全漁連とJF静岡漁連、回転寿司チェーン「がってん寿司」で陸上養殖カワハギを提供 水産庁の「バリューチェーン改善促進事業」の一環JF全漁連と静岡県漁業協同組合連合会(以下、JF静岡漁連)はこのほど、水産庁の「バリューチェーン改善促進事業」の取り組みの一環として、静岡県産の陸上養殖カワハギを回転寿司チェーン「がってん寿司」へ流通2024.2.29水産業の新戦略JF全漁連編集部
泉南地域の食文化維持を目指す ーJF岡田浦によるアナゴ蓄養事業ーかつて大阪府泉南市の岡田浦漁業協同組合(JF岡田浦)は府内でもトップクラスのアナゴの水揚げ量を誇っていました。アナゴは泉南地域に欠かせない伝統的な食材で、祭礼行事などがあると、煮アナゴ、押し寿司、天ぷ2024.7.23水産業の新戦略古江晋也(ふるえ しんや)
地域の人々が力を合わせて刈る「房州ひじき」海であるのに「鹿尾菜」、「羊栖菜」と動物の一字が入っている海藻は何でしょうか。この海藻は、煮物や炊き込みご飯によく使われます。答えは、ヒジキです。ヒジキは、植物繊維、鉄分、カルシウムなどを含む、栄養価2022.9.8水産業の新戦略田口 さつき(たぐち さつき)