水産業の新戦略 「資源管理・品質管理・魚食普及」セットで挑む所得UP!千葉県夷隅地区~「浜プラン」全漁連会長賞の紹介~ 2020.11.6 JF全漁連編集部 印刷する 「浜の活力再生プラン」、通称「浜プラン」は地域ごとの特性を踏まえて、漁師や漁協(以下JF“じぇいえふ”)、市町村などでつくる組織(地域水産業再生委員会)が自ら立てる取組計画。 その地域の人たちが自分たちで課題と解決策を考え、業界を越えた連携もしながら取り組む、ボトムアップの水産政策だ。 ▼浜プランについてはこちらの記事で 大臣賞など決定!「浜プラン」で所UP 今回は、資源管理・品質管理・魚食普及の合わせ技で地魚のブランド化や漁業所得向上を実現した、千葉県夷隅地区の事例を紹介する。 千葉県夷隅地区は、昨年度の「浜の活力再生プラン優良事例表彰」で全漁連会長賞を受賞した。 浜プラン.jpコラムから転載▼ 組織名: 千葉県地域水産業再生委員会夷隅地区部会 構成メンバー: 新勝浦市漁業協同組合、勝浦漁業協同組合、御宿岩和田漁業協同組合、夷隅東部漁業協同組合、勝浦市、御宿町、いすみ市、 千葉県漁業協同組合連合会、千葉県(勝浦水産事務所) 地域: 夷隅地区 漁業種類:小型漁船漁業、まき網漁業、船びき漁業 ▶「外房つりきんめ鯛」公式サイト ▶プライドフィッシュ「千葉のつりきんめ」 地域経済の中心、夷隅地区の「沿岸漁業」千葉県の沿岸漁業の中心地として発展してきた夷隅地区。首都圏から車で2時間の立地を生かし、水産物の一大供給地としての役割を担ってきた。 浜プランでは、キンメダイなどの資源管理を徹底したうえで、鮮度管理による付加価値の向上、水産物のPR、さらには女性グループ活動の活性化などに取り組み、漁業所得向上の実績を上げてきた。 漁師が一致団結!「資源管理」で持続可能な生産体制づくり夷隅地区の沿岸から20マイル付近に「キンメ場」と呼ばれる漁場が形成され、比較的安定した漁獲が見込まれることから、この地域では多くの沿岸漁業者が「キンメダイ漁業」を操業の柱にしている。 持続的に生産するための資源管理・操業秩序維持は、50年以上前から関係漁師の合意のもとブラッシュアップしてきた。 現在行われている資源管理の方法は、全長25㎝以下のキンメダイは海に戻す「体長制限」や、7~9月に資源を休ませるための「休漁日・休漁期間」の設定など。 県の研究機関が資源の状況などを科学的に分析した「資源評価」などを踏まえて、現状の資源管理や操業規約(操業のルール)の点検も定期的に行っている。 漁師みんなが一致団結してこの資源管理に参加し、持続可能な漁業を推進しているのだ。 「外房つりきんめ鯛」ブランド化!『鮮度保持マニュアル』で品質管理徹底すでにブランド力があった銚子産のキンメダイとの差を縮め、所得向上につなげようと、漁師たちは資源管理に加え、鮮度管理なども行ってきた。 船の上では、保管温度を低温に保つことができるクーラーボックスを使うことにした。また、県の研究機関の研究成果も活用し、キンメダイの体色をきれいな赤色に保つために塩分を調整した保冷水を使っている。 さらに市場の設備も整え、地域全体で品質を向上させる体制をつくってきた。 こういった取り組みにより他産地との差別化を図ってきたことが認められ、「外房つりきんめ鯛」は「千葉県ブランド水産物」に認定された。 鮮度保持マニュアル(2018年度 全国青年・女性漁業者交流大会資料より)漁師たちはここで足を止めず、このブランド力を維持し、流通業者・消費者からの信頼を得続けるために、更なる品質管理の徹底に取り組んだ。 船上での鮮度管理を分かりやすく示した「鮮度保持マニュアル」を作成し、各船に配布。「鮮度保持マニュアル」を船に常備し、鮮度保持の意識を維持するとともに、年に1~2回、各漁船の保管容器の水温・塩分のチェックを行っている。 この取り組みは、冬場のマカジキブランド「勝浦釣り寒マカジキ」でも生かされ、他の魚種にも波及している。 魚食普及で消費喚起、女性グループが活躍!夷隅地区の取り組みは、「獲る」部分だけにとどまらない。地元の魚を消費者に知ってもらうための「魚食普及」にも力を入れてきた。 魚食普及の立役者は地元の漁協女性部のみなさん。 漁協女性部は、地魚を使った料理の献立集を作成・公開している。キンメダイやカツオ、サバなどさまざまな魚を使った献立が多数公開されており、地元水産物のPRや魚料理教室のツールにもなっている。 2015年には、この献立集から選んだ「勝浦風カツオ漬け丼」で、「Fish-1グランプリ2015」に出場し、グランプリを受賞した。 また、水産物のPRや魚食普及のイベントに、漁協女性部が積極的に協力。市内の大学生と連携し料理教室を開くなど、食育を通し教育分野にも貢献している。 地域に貢献する漁業、浜プラン第2期も躍進夷隅地区では、キンメダイに限らず、アワビやマカジキなど様々な旬の魚で資源管理と品質向上の取り組みを行っている。 資源を増やす・守るだけではなく、その価値を高め、さらに流通業者や消費者に理解してもらうことで、漁師の所得UPを実現した。 そして、それらの取り組みを地域一丸となって実施することで、地域の観光業や教育分野にも貢献してきた。 2019年度から夷隅地区の浜プランは第2期に突入している。2020年9月には勝浦漁港においてさらなる衛生面の向上と作業時間の短縮・効率化を目指し、高度衛生管理型荷さばき所の建設工事が着工された。 漁師を始めとする関係者たちの、長年にわたる丁寧な取り組みが、地域を動かしている。 ▶他の地域の浜プランに関する記事はこちら 浜プラン関東JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む
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琵琶湖の特産品「セタシジミ」の復活を願って ~JF瀬田町による外来種水草駆除の取り組み~琵琶湖と淀川をつなぐ瀬田川では1950年代から60年代にかけて「セタシジミ」がたくさん獲れました。セタシジミは琵琶湖水系にのみ生息する固有種であり、琵琶湖の特産品です。 漁業者によると「瀬田川に足を入2023.1.6水産業の新戦略古江晋也(ふるえ しんや)
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