【漁協よ永遠なれ】第5回 日本漁業の新時代における漁協運動の展開方向

日本漁業の新時代における漁協運動の展開方向 寄稿:工藤貴史(東京海洋大学海洋政策文化学部門准教授)

新しい時代の漁協運動

水産政策の改革によって漁業法が改正され、元号も平成から令和へと変わるなかで日本漁業は大きな転換期を迎えている。

新しい時代の始まりにあって漁協もまた新たな展開が求められており、来年にはJFグループの新たな運動方針が示されることになるだろう。

これまでの漁協運動を振り返ると、1983年に開催された第1回全国漁業協同組合大会が大きな画期だったと私は考えている。この大会では、漁協運動の推進・強化の基本方針として以下の5つの事項が決議された。

⑴協同意識の高揚を図り、組合員主体の協同活動を展開する。

⑵協同活動を生産の場に広げ、資源と漁場の自主管理を行う。

⑶営漁計画を推進し、計画的漁業経営の構築を図る。

⑷漁業生産構造の再編を推進し、資源に見合った生産体制の確立と経営体質の改善を図る。

⑸組織と経営を刷新強化し、事業機能の強化と事業運営の効率化を図る。

これらの運動方針は、資源管理型漁業と地域営漁計画の政策形成に結び付き、全国各地に広く展開していくこととなった。

資源管理型漁業と地域営漁計画は、漁業の内部に存在する問題を「協同の力」によって解決しようとするものであり、漁業の産業的特質と協同組合の基本的性格が合致した宿命的かつ内発的な漁協運動であった。この時代、漁協は日本漁業の発展をけん引する先導的役割を担っていたといってよいだろう。

協同の力をどう活かすか

さて、紙幅の限られた本稿において過去の運動方針をそのまま載せた理由は2つある。

一つは、この運動方針が現在においても全く陳腐化しておらず普遍的な課題といえるからである。もちろん、漁業を取り巻く状況は当時と大きく変化しており、とりわけ経営体数は当時と比較すると現在は4割程度にまで減少した。

今後も漁業経営体数の減少が不可避な状況にあるなかで、地域全体の漁業生産を維持していくためにはやはり上記⑵⑶⑷が重要な課題といえよう。

もう1つは、漁協運動は「協同の力」を原動力として浜の実践から理論が構築されて展開していくという運動法則を確認しておきたかったからである。

昨今の水産政策においては、漁業外部から派生した概念・手法に基づいて政策形成されるケースが少なくない。もちろん、こうした外来の概念・手法を水産業に取り込むことによって新しい展開を期待するといったアプローチはあるだろう。

とはいえ、日本漁業の新時代において漁協が先導的役割を果たすためには、浜の実践から内発的に醸成された運動方針が必要不可欠である。

以上の2つの点を踏まえると、新時代における漁協運動の軸として期待されるのは、やはり浜の活力再生プランということになるであろう。

現在の浜の活力再生プランは所得向上を目標としているが、これからはその上位目標として地域全体の漁業生産を維持するための自主的漁場利用計画として発展していくことが期待される。

具体的には、5年後の漁業経営体数の変化を見越して、漁場利用制度を再編し、資源と労働力に見合った生産体制を確立することによって所得向上を実現するということである。

そして、自主的漁場利用計画は、漁業権漁場のみならず許可漁業と自由漁業も含めて地先漁場全体を対象にして、その総合的利用の実現と漁業生産力の発展について考えていくべきである。

さらに、単協を超えてより広範な「協同の力」を発揮させて、県域全体の自主的漁場利用計画を策定し、それを県行政に提案していくといった先導的役割が期待される。(完)

 

※特集「漁協よ永遠なれ」は、JF全漁連発行の季刊誌「漁協(くみあい)」2019年秋号に掲載したものを、編集し転載しました。JF全漁連アーカイブスから本誌をご覧いただけます。

 

JFグループの新たな運動方針
2020年~2024年度の運動方針。2019年11月22日JF全国代表者集会において採択済み。
  • JF全漁連編集部

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