漁師がつくった"気候変動・災害マップ"

JF全漁連は漁師がつくる漁協(漁業協同組合、愛称は「JF」“じぇいえふ”といいます)の全国連合会です。
今回は、JF青年部の全国連であるJF全国漁青連(じぇいえふぜんこくぎょせいれん)が行った「気候変動、自然災害を考える」取り組みをご紹介。
日々自然と向き合う漁師が地域をこえて行ったユニークな取り組みです。

自然災害が多発、近年の漁師の課題

毎日自然と向き合う漁師たちは、日々の環境の変化に敏感です。一方で、毎日変わる海にどう対応していくかを常に考え、これまでも柔軟に漁業の方法や経営の仕方を工夫してきました。

そんな柔軟な漁師たちでも太刀打ちできないのが、これまで経験したことがないような自然災害や、温暖化が原因とされる海水温の上昇など。止めることも、逃げることもできない自然の現象です。

そこで、昨年6月、JF全国漁青連役員たちが企画し、“この地球の異変で、全国の仲間たちはどんなことに困っているのだろう”“どんな対応をしているんだろう”ということを共有し合う研修会を開催しました。(青年漁業者のためのブラッシュアップ研修)

大きな日本地図で情報共有

情報共有の方法は、漁師らしく豪快に!大きな日本地図を壁に貼り付け、それぞれの地域で起こっている「環境変化」と「自然災害」をその地図に記録していくものです。

約70人の若手漁師、JF・漁連職員が一斉に日本地図に向かい、変化や災害の種類によって色分けしたシールを貼り付けます。

その後、地図を眺めながら、みんなで情報交換をし、さらに地図に情報を追加していきます。

あっという間に、全国の漁師がつくる「気候変動・自然災害マップ」が出来上がりました。

この地図を眺めながら全体で情報共有したのち、グループに分かれて対応策などを話し合いました。

「今まで捕れなかった魚が捕れた!」という現象には「新しい流通ルートの開拓」、「災害時に備えて水上消防団を作っている」など、すでに各地で行っている取り組みや、新しいアイディアなど意見を交換し合いました。

若手研究者と連携、客観的な分析も

中央水産研究所 竹村さん

この研修では、水産研究・教育機構中央水研所研究員の竹村紫苑さんにファシリテーターと分析をお願いしました。

実は竹村さん、10年前までは沖縄のマングローブの生態を研究していました。ところが、マングローブを保全するためには、利用している地域の方々とのコミュニケーションが重要だということに気付き、今では環境や社会、経済など分野横断的な視点で研究をされているそうです。

私たちJFや漁師と科学者を繋ぐ存在といっても良いかもしれません。

竹村さんは、今回の若手漁師たちの意見を取りまとめ、気候変動下におけるJF青年部の役割について分析してくださいました。

竹村さんに、分析結果を教えていただきましょう。

竹村さんが考える「結果」と「分析」

—今回の研修でわかったことはなんですか?

青年漁業者の皆さんが地域で直面している自然災害と環境変化の実態、それらに対して各地で実施している取り組み、そして、気候変動下における漁協青年部の役割を発見できました。

—つくった日本地図を見ての考察は?

西日本では台風や洪水、東日本では地震や津波による自然災害に直面しており、漁業者は漁場の掃除、緊急時の連絡体制づくり、高齢者の補助などの取り組みを実施していました。

また、近年、全国的に海況・水温の変化、そして、獲れる魚・時季の変化が顕著になっており、漁業者は漁具・漁法の改善、漁場の手入れ、漁場の調査、担い手育成などの対応策を講じていました。

—この研修の結果を次に生かすために、研究者の視点でアドバイスを。

研修を通じて、自然災害に対してできること(災害時・緊急時に備えて/災害時)や、環境変化に対してできること(獲れる魚が変わった時/漁場環境が悪化した時)の具体的な取り組みが明らかになりました。
今後、ご自身の地域が直面している課題に対して、他地域で有効だった具体的な取り組みを参考にしながら、地域の関係者と本当に必要な改善策について協議し、実施していくことが気候変動化における漁協青年部の重要な役割だと考えます。

—今後青年漁業者に期待することは?

他地域の取り組みについて積極的に情報を交換する青年漁業者の姿に感銘を受けました。次世代を担うリーダーとして、地域の漁業を元気にする様々な活動を通じて、今後の青年部組織や地域を牽引していただきたいです。

—今回ファシリテーター、分析をやってみた感想を教えてください。

青年漁業者が感じている漁業の現状、日本各地で実施されている様々な取り組み、そして、改善策に対するニーズなどについて勉強する貴重な機会になりました。
本当にありがとうございました!

地域を越えて、より大きなビジョンに

竹村さんは、普段は地域単位の話し合いの場をプロデュースすることが多いそうです。

今回のように地域をこえて全国の漁師が集まって話すことの効果について聞いてみると、「地域ごとに話し合うと、より具体的な課題や解決策が出てきます。

一方で、全国の漁師が集まることで、より大きなビジョンや将来像を話し合える傾向があります。」とのこと。

今回のように、地球規模の変化を考えるときには、視野を広く、全国の漁師で話し合うことが効果的だったようです。

この研修に参加した漁師たちは、大自然とのお付き合いの難しさを改めて噛みしめ、「地域を越えた全国のつながりを大切に」という決意を胸に、今日も各浜で奮闘中です。

※取りまとめ結果は記事下の関連データからダウンロードできます。ぜひご覧ください!

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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