JFレポート 利用しながら守る、保全のこころ―シンポジウム「里海保全の最前線」レポート― 2020.2.21 JF全漁連編集部 印刷する シンポジウム「里海保全の最前線」を開催2月8日、東大安田講堂に約550人が詰めかけたシンポジウム「里海保全の最前線」(主催:JF全漁連、全国内水面漁連)。 そこには、全国各地の海辺や川辺で環境保全活動などに取組む漁師や市民のほか、その活動報告を聞きに、数多くの一般の方々などが来場した。 このシンポジウムは、活動グループが水産業の「多面的機能」を発揮するために行う日ごろの取組みを報告しあい、情報交換をするだけでなく、来場した多くの人に海の状況や取組みへの理解をしてもらうことも目指している。 水産業の多面的機能とは?水産業の「ためんてききのう」とは、「美味しく新鮮な魚を安定的に皆さんに提供する」以外の「水産業がもたらす良い影響」のこと。 たとえば、漁師が毎日海に出ていくことで、海で密漁をする不審船を見つけたり、すぐにおぼれた人を助けに行ったりできる。 また、海を毎日見ている漁師は、ちょっとした環境の変化に気づき、すぐに対応することができる。 変化に気づき、常に“人が関わりながら”守られている海辺には、たくさんの生き物がすみついたり、賑わいがうまれたりする。 このように、そこに“水産業”という“なりわい”があることで発揮される機能を、「水産業の多面的機能」と言う。 ▶参考資料:日本の漁業・漁村の多面的な役割と国際評価(東京大学八木信之教授 講演録) ▶JF全漁連の水産多面的機能発揮対策情報はこちら 基調講演で「海洋プラごみ」道田豊センター長まず行われたのは、世界中で話題になっている海洋プラスチックごみについての基調講演。 東京大学大気海洋研究所の道田豊国際連携研究センター長が、研究の現状と課題を講演した。 道田センター長は、海洋物理学等の専門家。つまり、海の流れの専門家であり、プラスチックごみがどのように海に流れ込むか、どのように海を漂うかを研究している。 2019年からは、「日本財団・東京大学海洋ごみ対策プロジェクト」を率いて、さまざまな分野の情報をつなぎ、研究と対策を検討している。 「プラスチック自体を悪者にするつもりはない。医療現場や衛生管理の面で必要な場面もある。削減できるところで努力していくべき」としたうえで、過去の研究や警告、海洋ごみ対策プロジェクトにおける今後の展望などを説明した。 ▶道田センター長講演資料 活動報告、「保全」は利用しながら守ること八木信行教授活動報告では、環境保全活動や海上安全、海や川の生態系の保全の取組などを行う6つのグループが発表を行った。 はじめにコーディネーターの東京大学八木信行教授が、「“里海”とは、人間が生態系の一体としてとらえる考え方。“保全”は資源を守りながら利用するという意味。自然を利用しないだけの“保護”とは違う」と、『里海保全』の考え方について解説し、6つのグループが活動報告を行った。 ①入間川流域地区活動組織(埼玉県) 平井純子さん地元の入間漁協と連携しで活動組織のネットワークをつくり、大学生や市民を巻き込んだ河川清掃活動、体験学習などを実施している。 ②江の島・フィッシャーマンズ・プロジェクト(神奈川県) 北村治之さん、山下由香里さん漁協や水族館、ダイバーが構成員となり、江の島周辺の海洋環境保全活動を行っている。地域の方々が参加できる「海藻シンポジウム」も開催。 ③香住の海の会(兵庫県) 駒居慧一さん海難事故や漂流物による事故、外国船の密漁などの課題を解決する目に、漁師・漁協を中心に海の監視ネットワークを構築した。 ④白浦活動組織(三重県) 世古昌英さん、鈴木望海さん漁師・漁協、NPO法人が連携し、大学等のサポートを受け、専門的な知識と人手を確保しながら海の磯焼け対策を実施。 ⑤鏡町アサリ活動組織(熊本県) 石澤修さん、徳田司さん2011年の九州北部豪雨被害を受け、翌年からアサリが生息しなくなった干潟に、漁師・漁協、行政等と連携して母貝放流や干潟の耕うんなどを行った。2018年には一部潮干狩り再開。 ⑥宍道湖流域保全協議会(島根県) 古藤司さん、原信治さん、桑原正樹さん漁師・漁協、行政が連携し、豪雨や水草の繁茂、湖の低塩分化により大きく減少したシジミ資源を回復させる保全活動や、保全の重要性を伝える普及活動を実施。 意見交換・講評最後には、報告者とコメンテーター、来場者が意見交換を行った。 意見交換では、各地の活動の悩みや対策を共有しあったほか、プラスチックごみ対策について河川・海それぞれの立場からの情報も出された。 コーディネーターの八木教授は、「人口減の実態や、それをどうやって補っていくのかなどもっと議論したいことも出てきた。今日は有益な意見交換だった。」と活発な意見交換を締めくくった。 <コーディネーター> 八木信之 氏(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授) <コメンテーター> ・鹿熊信一郎 氏(佐賀大学) ・玉置 泰司 氏(水産研究・教育機構 中央水産研究所) ・樋田 陽治 氏(元 山形県内水面漁業協同組合連合会) ・藤田 大介 氏(東京海洋大学) ・湯川 英俊 氏(NHK関連事業局) 【参考】 開場では全国各地の活動報告ポスター展示も行われました。 展示ポスターのデータは以下よりダウンロードできます。 ▶流氷の着岸が少なくなった沿岸部におけるコンブ場の保全(北海道) ▶未来への引継ぎを目指してホッキ資源と干潟等の保全(北海道) ▶地元漁師が取り組む「藻場再生」(青森県) ▶漁業者と地域住民で構築する海の安全ネットワーク(青森県) ▶川遊びを通した、渡良瀬川水系の環境保全活動(群馬県) ▶伝統ある稲取産テングサの維持・保全(静岡県) ▶地域で取り組む干潟環境の保全(愛知県) ▶浅場の生産力を高め、豊かな海を次世代に引き継ぐ(兵庫県) ▶豊かな干潟の再生をめざして(広島県) ▶アサリ資源の再生稚貝の確保とその後の保護・育成(広島県) ▶かつての豊かな干潟を復活させる(山口県) ▶かつての藻場を回復し、優良な藻場を後世に残す(山口県) ▶仁淀川にかかわる後継者を育てたい(高知県) ▶かつての四季藻場の回復を目指して(長崎県) ▶水産資源を育む藻場を維持し、漁業の持続を図る(大分県) ▶島のサンゴを見守り、後世につなぐ(沖縄県) JF全漁連SDGs資源管理研修JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む
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