JFレポート 「海洋環境変化対応プロジェクト」を2025年度から本格始動 JF全漁連、日本財団、東京大学大気海洋研究所が連携 2025.1.31 JF全漁連編集部 印刷する 近年、海水温の上昇などの海洋環境変化により、漁業に大きな影響が出ています。サケ・サンマなどの不漁が毎年のようにニュースで伝えられ、漁獲できる時期や魚種も変化しています。 このようなことから、JF 全漁連と日本財団、東京大学大気海洋研究所は、日本の沿岸域を対象とした「海洋環境変化対応プロジェクト」を立ち上げ、本年4月から本格的に始動します。 左から坂本雅信JF全漁連会長、笹川陽平日本財団会長、兵藤晋東京大学大気海洋研究所所長プロジェクトの目的は「日本沿岸の海洋環境変化の可視化」「海洋環境変化対応プロジェクト」の目的は、日本沿岸の海洋環境変化を可視化し、広く国民に現状を伝えるとともに、今後の対応策を見出すこと。全国的には初めて漁業者と研究者が連携し、漁業者が全国各地で海水温や獲れる魚種のデータなどを収集し、研究者が分析をして海洋環境変化の実情を明らかにすることを目指します。その上で将来の対応策を見出し、メディアへ情報を発信していきます。 参加団体の役割は以下の通りです。 【JF全漁連】 全国各地の浜で若手漁業者によるモニタリング調査を行い、定量情報として海水温データの取得、定性情報として海洋生物などの情報収集を行います。 【東京大学大気海洋研究所】 調査データを分析、解析し、研究課題やテーマを設定した上で、対応策の検討を行います。 【日本財団】 漁業者と研究者が連携するため、同プロジェクトの全体コーディネートを担当し、調査結果を広く国民に伝えます。 1月20日に共同記者発表会を開催1月20日にはJF 全漁連と日本財団、東京大学大気海洋研究所の3者による共同記者発表会を開催しました。 冒頭、3団体の代表者があいさつし、それぞれプロジェクトへの抱負を語りました。 【JF全漁連 坂本雅信会長】 「我々は今回、海洋環境が変化する中で自分たちの将来をどのようにしていけばよいかを一生懸命考えている若手漁業者たちに海水温などのデータを取ってもらい、学者の先生たちにデータを分析してもらって、『どのような対応ができるか?』『どのように対応すれば、今後漁業が永続できるか?尚且つ海洋環境に対応したものになっていくのか?』ということを検証するために、このプロジェクトを始めた。 日本の漁業、魚は日本の和食文化に結びついている。日本の漁業・魚にはポテンシャルがあるが、肝心の魚が獲れなくなると日本の漁業が永続できなくなる。和食文化と日本の漁業を守るためにもこのプロジェクトをぜひとも成功させていきたい」 坂本会長【日本財団 笹川陽平会長】 「日本財団は古くから海洋環境の問題に取り組んでいるが、ようやく世界的に国際機関を中心に研究が取り組まれるようになった。日本は海に守られた国なので、海洋問題にはもっと敏感にならなければいけないと思っていた。 若い漁業者たちは危機感を持っており、このプロジェクトに取り組むことで、日本の食料安全保障、食生活に欠かせない水産資源の管理に繋げていきたい」 笹川会長【東京大学大気海洋研究所 兵藤晋所長】 「これまでは、現場に直結した内容の研究ができていなかったが、今回のプロジェクトにより、漁業者と連携した研究を行う機会を得ることができた。長期的にモニタリングすることは地味だが必要不可欠な重要な活動。我々はこのプロジェクトで、きちんとデータを解析して、『今後、何をすればよいか』を提案していきたい」 兵藤所長日本の漁業の現状や現場の声を紹介続いて、三浦秀樹JF全漁連常務が日本の漁業の現状について、海野光行日本財団常務が事業全体概要に関して、川畑友和JF全国漁青連顧問が現場の声を紹介しました。 三浦常務三浦常務は、漁獲量が1988年の1,278万トンをピークに、2022年には392万トンまで減少したことを紹介。漁獲量が減少した要因については、①200海里水域設定に伴う遠洋漁業の縮小、②レジームシフトの影響を強く受けてのマイワシ資源の減少、③高度経済成長期以降の沿岸域での埋め立ておよび海岸・河川での護岸工事などの影響による藻場・干潟の減少、④外国漁船による大量漁獲やIUU漁業、⑤漁業就業者数の減少、⑥近年の日本近海の海面水温が過去100年間で1.28度上昇するなど海洋環境が激変したこと―などを挙げ、「特に海洋環境の激変は漁業者および国民共通の課題」と指摘しました。 これらの課題を克服するためには「資源と環境の同時回復が必要であり、そのようにするためには徹底的な原因究明と実効性のある対策が重要」との考えを示しました。 川畑顧問プロジェクトに参加する若手漁業者を代表して、川畑顧問は地元・鹿児島県山川町での藻場造成などの取り組みを紹介した上で、「海の環境問題は、海を生業としている漁業者こそが取り組むべき課題。永遠に豊かな海を残すために、しっかり取り組んでいきたい」と意気込みを語りました。 * * * その後、全体質疑が行われ、参加した記者たちからの質問に対し、坂本JF全漁連会長、兵藤東京大学大気海洋研究所所長らが回答しました。 なお、このプロジェクトは日本財団の助成事業成果物として登録されています。 JF全漁連漁協(JF)若手資源管理青年部JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む
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