JF愛知漁連、第1回伊勢・三河湾における「きれいで豊かな海」に係る勉強会

イメージ写真(出典:写真AC https://www.photo-ac.com/)

この情報は、愛知県漁業協同組合連合会(JF愛知漁連)の広報誌「あいちの水産」からの転載です。

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第1回伊勢・三河湾における「きれいで豊かな海」に係る勉強会が開催されました

伊勢・三河湾においては、全国一を誇るアサリ漁獲量の減少やノリの色落ちが深刻であり、漁業生産は減少しています。この要因の一つとして栄養塩濃度の低下が指摘されています。
昨年6月、国は、瀬戸内海におけるノリの色落ちやイカナゴの不漁などを背景に、瀬戸内海環境保全特別措置法を改正し、地域ごとのニーズに応じた「栄養塩類管理制度」を創設しました。
これにより、従来の規制中心の水環境行政が転換され、瀬戸内海における生物の多様性や水産資源の持続的な利用の確保を進めることとされました。
伊勢・三河湾では栄養塩類の低下への対策として、2017年から下水道の栄養塩放流濃度増加試験が実施されていますが、その効果はまだ限定的であり、湾全体には及んでいません。このため漁業生産を回復させるには、現行の水環境行政の見直しを含めた抜本的な取り組みが不可欠と考えられます。

このような中、環境省・水産庁の呼びかけにより、伊勢・三河湾を「きれいで豊かな海」にしていくための「勉強会」が立ち上がりました。
この勉強会は、瀬戸内海で得られた科学的知見や経験を活用しつつ、伊勢・三河湾における現状認識・知見等の共有、きれいで豊かな海を実現するための方向性を検討するもので、今後、定期的に開催されます。

昨年11月8日、第1回目の勉強会が、愛知・三重両県の漁業者や、国や県の行政担当者・研究者など約60名の参加により、オンラインで開催されました。

冒頭、本会(JF愛知漁連)の山下三千男会長から、「勉強して終わりではなく、しっかりとした成果につなげていただきたい」との要望が述べられ、議論の中では、各地区を代表する組合長から、伊勢・三河湾では、海がきれいになりすぎ、アサリやイワシを始め漁獲量が低下していること、ノリの色落ちが著しいことなどが訴えられました。

イメージ写真(出典:「あいちのあさり」プライドフィッシュWEBサイト https://pride-fish.jp/))

また、名城大学大学院鈴木特任教授からは、「伊勢・三河湾では、主要漁場の環境基準が厳しすぎることが、漁獲量回復のための栄養塩管理推進の障壁になっている。一刻も早く環境基準見直しの議論を進めるべき。」との指摘がありました。これを踏まえ、本会(JF愛知漁連)としても、一刻も早く下水道からの栄養塩供給を増加できるよう、総量規制、環境基準の見直しを強く要請しました。
他の学識経験者からは、「伊勢・三河湾については他の指定海域と同様に、海域を細かく分けて議論する必要がある。」等、知見や議論の不足を指摘する声があり、環境省からも、知見やデータの集積が必要との見解が示されました。

本会(JF愛知漁連)としては、漁業生産の回復は喫緊の課題であり、そのためには一刻も早い豊かな海の実現が必要と考えています。今後も、勉強会等を通じ、スピード感をもって対策が検討されることを強く求め、国や県に働きかけを行っていきます。

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