「サンマ長期漁海況予報」が発表—今シーズンの行方は?

秋の味覚を代表するサンマのシーズンがいよいよやって来ます。
サンマは一年中、店先に並ぶ魚と違い、大衆魚の中でも数少ない旬を感じさせてくれる魚。
このシーズンの到来を待ちわびている人は多いはずです。

ただ、近年は、不漁が続き、小売価格も高値で推移しているため、スーパーなどでなかなか手に取りにくい存在になっているのではないでしょうか?

そこで、今回は、7月に国の研究機関が発表した「サンマ長期漁海況予報」などを基に、今シーズンの見通しについてご紹介したいと思います。

サンマ漁ってどんな漁業?近年の漁模様は?

まずはサンマ漁の説明から。

サンマ漁は、春から初夏にかけて三陸沿岸を北上してきた群れを漁獲する「流し網漁」から、7月からロシア海域やオホーツク海から北海道道東、三陸沖、常磐沖へ南下していく群れを漁獲する「棒受け網漁」へと移行していきます。

棒受け網漁は、サンマの「一度光に集まると、同一方向に旋回する」という習性を利用して、サンマを棒受け網に誘い込んで、漁獲するもの。
国内で販売されるサンマのほとんどがこの漁法で漁獲されますが、近年、不漁が続いています。

さんま棒受け網漁業者の全国団体である全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)によると、昨シーズン(2019年)の全国の漁獲量は4万517トンまで減少しました。
これは、過去最低の漁獲量だった1969年(約5万2,000トン)を下回る記録です。

不漁となる要因については、①資源量が減っていること、②日本近海の水温が高く、サンマが日本の漁場に入りづらくなっていること―など、さまざまなものが考えられていますが、サンマの資源量が減少している主原因はまだはっきり分かっていません。

今シーズンも来遊量は「極めて低調」、研究機関が発表

それでは、今シーズンの漁模様はどうなるでしょう?

7月末に国の研究機関である水産研究・教育機構が発表した「令和2年度サンマ長期漁海況予報(道東~常磐海域)」によると、サンマの来遊量は去年を下回る模様で、漁期を通して「極めて低調」となりそうとのことです。

この「サンマ長期漁海況予報」は、水産庁からの委託を受け、漁業者や流通加工業者等の操業の効率化や経営の安定化、資源の合理的・持続的利用を図ることを目的として、国立研究開発法人 水産研究・教育機構が行っているもの。
6月から7月にかけて行った調査を基に、とりまとめられました。

詳しく見ていくと、漁場は、漁期を通して沖合に分散して形成され、サンマが三陸沖まで南下するのは例年より1か月ほど遅い10月下旬になりそうです。

また、漁獲の主体となる1歳魚の大きさは、例年よりもやせた、小さいサイズになる見込みです。
今シーズンが低調となる要因については、エサを奪い合うマイワシの分布範囲が拡大したことなどが考えられています。

それでもやっぱりサンマを食べたい!

2018年撮影

漁海況予報から、今シーズンのサンマの漁獲量は、過去最低だった昨年をさらに下回る可能性があることが分かりましたが、今回の予報は、新型コロナウイルスの影響で調査の海域が縮小されたことから、「例年に比べて見通しの不確実性が高い」(水産研究・教育機構)とも説明しています。

サンマは日本人にとってなくてはならない魚のひとつです。不漁による高値が懸念されますが、この秋もぜひ、脂の乗った香ばしいサンマの塩焼きを味わいたいものです。

今年は少しだけ贅沢品になってしまいそうですが、スーパーや魚屋さんで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

JF全漁連のプライドフィッシュプロジェクトの公式サイトでは、漁師が選んだ本当においしい魚“プライドフィッシュ”に認定された「小名浜の秋刀魚」のほか、サンマを使ったレシピも紹介しています。

▶サンマのレシピはこちら
※キーワード検索で「サンマ」と入力してください。

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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