新しい仲間の輪をひろげる! 「第28回全国女性漁業者グループリーダー研究集会」開催

JF全漁連は11月7日(月)、「第28回全国女性漁業者グループリーダー研究集会」を開催しました(共催:JF全国女性連)。

JF全国女性連は、漁協(JF)女性部の全国組織で、環境保全活動や魚食普及活動、女性参画運動など、漁村女性の地位向上を目指した活動を展開しています。

この研究集会は、漁村女性能力発展・実践活動促進支援事業(水産庁補助事業)の一環として、意欲ある漁村女性や女性漁業者が地域活性化の取組みを始めるに当たり、必要な知識、技術等を習得することを目的に、毎年開催しています。

一昨年は動画配信、昨年はオンライン開催となりましたが、今年は3年ぶりのリアル開催が実現。若手を含む全国各地の漁村女性・女性漁業者40人が全国各地から集結し、「JF女性部チャレンジ!―新しい仲間の輪をひろげて―」をテーマに掲げ、各地の女性部活動に関する事例発表のほか、情報提供、記念講演などの研究集会が行われました。

地元が誇る美味しい魚を届けるための活動事例を発表

事例発表を行ったのは、那珂湊漁業協同組合女性部の根本経子さん。第27回全国青年・女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を受賞した活動を、「那珂湊の誇るおいしい魚を届けるために~たくさんのサポーターとともに活動をつなぐ~」と題し紹介しました。

那珂湊漁業協同組合女性部の根本経子さん

イベント出店をきっかけに、「より多くの人に那珂湊の魚の美味しさを伝えたい!」という想いで本格的な活動を開始した女性部では現在、未利用魚を含め地元の魚を使った加工品の、PRにも力を入れて販売しています。また水産物のキャンペーンに積極的に参加するほか、ケータリング提供やロケ弁提供、学校給食や老人ホーム、ホテル、県庁生協での食材提供、市場見学とあわせた料理教室など、多彩な企画での多様な魚食普及活動を展開しています。

魚食普及にあわせて未利用・低利用魚の有効利用に力を入れてきたことは、活動前から比較して浜値が4倍になるなど、浜値底上げにもつながっています。

市民団体と一体になって行ってきたこれらの活動は、2016年4月には「ひたちなか市魚食の普及促進に関する条例」制定という形で結実。最近は新たに子育て世代の2人の部員を迎え、若手の行動力や発想力を生かして、今後も1人でも多くの人に那珂湊の魚を届ける活動を続けたいと語りました。

地元ならではの食材「エゴノリ」を生かした加工品づくりの活動事例を発表

次に事例発表を行ったのは、山口県漁業協同組合粟野支店女性部の江本豊美さん。第27回全国青年・女性漁業者交流大会で農林中央金庫理事長賞を受賞した活動を、「エゴノリ100%の『おきゅうと』を後世に、私たちの挑戦」と題して報告。地元ならではの商品開発に向けた取り組み事例を紹介しました。

山口県漁業協同組合 粟野支店女性部の江本豊美さん

山口県下関市最北端で、日本海に面して位置する粟野支店は、集客的には不利な立地です。高齢化による漁業の衰退もあり、浜の活気が失われていることを日に日に感じるなか、女性部が元気なら地域が活性化するのではないか、女性部として何ができるだろうかと皆で協議を重ねました。女性部総会で提案した加工品づくりは「とにかく一歩踏み出してみよう」と全員が賛同し、取り組みがスタートしました。

粟野地区女性部ならではの商品開発をして差別化を図ろうと検討を重ねるなかで、粟野地区の家庭料理であった「おきゅうと」に着目しました。粟野地区特有の海藻・エゴノリだけを原料とした「エゴノリ100%のおきゅうと」を復活させ、地元の名物にすることを目標に掲げ活動。認知度の向上のためスイーツ感覚の食べ方の提案、試食提供、ラベルデザインの工夫やPRなどで試行錯誤を重ねるうち、認知度が向上し取り扱い店舗が増え、リピーターも増加。出荷翌日には完売、イベントでは短時間で売り切れるなどの人気ぶりとなっています。

活動を続けるなかで、約3年に一度に限られる原材料の確保や磯焼け対策など、課題もみえてきたため、最近では水産大学校の指導を受けながら、藻場調査や保全の取り組みもはじまっています。

女性部が元気に活動することが地域の活性につながると信じ、これからも挑戦を続けていきたいと語りました。

災害の経験を未来に伝える「命の声」を紹介

全国共済水産業協同組合連合会普及・研究部部長の肥塚健一さん

情報提供の部では、全国共済水産業協同組合連合会普及・研究部部長の肥塚健一さんが、「命の声~災害の経験を未来に伝える~」と題し、JF共済創設70年を記念し創刊された冊子『命の声』を紹介しました。

東日本各地の組合員による東日本大震災の際の体験談、教訓を聞き取りまとめたこの冊子のなかから、掲載の一部を会場で共有。経験に基づくこれらの声を皆で伝えあい、組合員をはじめ漁業従事者、地域の皆で命を守りましょうと呼びかけました。

女性ならではの特性を活かした「ひとりひとりが主役」になる活動を紹介

一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)の主席研究員である小川理恵さん

最後に、一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)の主席研究員である小川理恵さんが、「~コロナ危機をどう克服するか~アフターコロナに向けた新たなステップ」と題して記念講演を行いました。

女性ならではの「気づく力=バネ」と、「つなぐ力=接着剤」は地域の「宝」であり、そのバネと接着剤のサイクル実現のためにはリーダーの存在が欠かせず、リーダーがその役割を果たせた際には漁協と地域の可能性が広がることを、事例を交えて紹介しました。

具体的な質問や感想、意見などが活発に発言されました

各事例発表や記念講演の後の意見交換では、那珂湊での条例制定に至るまでの詳細経緯についての質問や、「おきゅうと」を購入したいという声、通信販売の提案、情報提供への感謝の意など、登壇者と参加者の間で活発な意見が交わされました。

また研究集会終了後の会場でも、各地からの参加者同士で歓談する様子がみられました。リアル開催ならではの交流があり、まさに今回のテーマ「新しい仲間の輪を広げる」研究集会としての実りを感じた時間でした。

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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