ニッポンさかな酒 「銚子のつりきんめ」に千葉の酒 文&写真:吉村喜彦 2025.2.20 吉村 喜彦(よしむら のぶひこ) 印刷する 銚子は魚のまちとして有名だ。 沖合には寒流と暖流の潮目があり、 そこに利根川からの淡水も混ざり合い、 植物プランクトンが大量に発生する。 そのプランクトンを狙ってイワシなどの小魚が集まり、 小魚たちを追いかけてサバ、カツオなどがやってくる。 なので、銚子で上がる魚は種類が豊富で、 じつにバラエティーに富んでいる。 なかでもキンメダイは銚子のスター。 東京豊洲市場でトップクラスの評価で、 仲卸のあいだでは、 「銚キン(銚子のキンメダイ)」 とリスペクトを込めて呼ばれている。 * * * キンメダイは深海魚。 銚子・外川(とがわ)支所のキンメダイ漁場は犬吠埼の南南東50キロの沖合。 水深300~500メートル。 底立縄(そこたてなわ)と呼ばれる一本釣り漁法によって、 1尾ずつ丁寧に釣り上げられている。 港から漁場までは1時間半。 かつては我先にと急いだそうだが、 いまはエンジンを吹かさず、わざわざ3時間ほどかけて行く。 「燃料もくわない。エンジンの消耗もない。安全面でもいいからです。 いまは朝まずめ(かわたれどき)を狙って操業をはじめるので、 朝日が昇る前に漁場に着けばいいんです」 と外川の漁師は言う。 操業は夜明け前からはじまり、 その日の午前中には市場で入札できるようにしている。 また、獲りすぎないよう漁具の縄の数は乗組員プラス1本(たとえば二人乗りならば、3本の縄)。 釣り針の数は1縄あたり60本。 操業時間は1日3時間以内に制限。 全長25㎝以下のキンメダイを獲った場合は再放流するようにしている。 違反があった場合には罰則もつくった。 * * * 外川支所のスローガンは「少なく獲って、高く売る」 漁師たちは、すべて自分たちの頭で考え、おのれの身体で変革してきた。 小難しい言葉を使う、無責任なコンサルタントなどの力は一切借りていない。 そのことがじつは自信にもつながっている。 資源を守りながら、愛情をこめて大切に扱う銚子のキンメダイは、 「銚子のつりきんめ」として、 2013年に千葉ブランド水産物生鮮第一号に認定され、商標登録もされた。 * * * そんな「銚子のつりきんめ」を外川の寿司屋では、炙って握る。 塩でいただくと、これがまた上品な脂がのっていて、たまらない。 ひとくち頬ばると、甘い香りにつつまれた白身肉がすーっと溶けていき、 豊かな味わいが広がっていく。 春がもうすぐの今の季節。 千葉の酒「寒菊 OCEAN99シリーズ 凪〜Spring Misty 純米大吟醸 うすにごり無濾過生原酒」 を合わせるのはいかがだろう。 少し日が長くなりはじめた日々、 水面にきらめく陽光をイメージしてつくった酒だという。 精米歩合50%。 雑味が少なく、やわらかく、すっきりとした味わい。 ほのかな甘みと引き締まった酸味にメリハリがあり、後口もすっきり。 微発泡のこの酒は、 炙ったキンメダイや甘辛い煮つけにぴったり。 早春におすすめのペアリングだ。 文&写真:吉村喜彦 酒漁師資源管理関東吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)1954年大阪生まれ。京都大学教育学部卒業。サントリー宣伝部勤務を経て作家に。 著書に、小説『バー堂島』『バー・リバーサイド』『二子玉川物語』『酒の神さま』(ハルキ文庫) 『ビア・ボーイ』『こぼん』(新潮社、PHP文芸文庫)『ウイスキー・ボーイ』(PHP文芸文庫) ノンフィクションでは、『漁師になろうよ』『リキュール&スピリッツ通の本』(ともに小学館) 『マスター。ウイスキーください〜日本列島バーの旅』(コモンズ)『オキナワ海人日和』(三省堂) 『食べる、飲む、聞く 〜沖縄・美味の島』(光文社新書)『ヤポネシアちゃんぷるー』(アスペクト)など多数。 NHK-FMの人気番組「音楽遊覧飛行〜食と音楽でめぐる地球の旅」の構成・選曲・DJを長年つとめた。 現在、月刊「地域人」で全国の漁師を取材する「港町ブルース」を連載中。このライターの記事をもっと読む
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