ニッポンさかな酒 「グルクマくん」と「山原くいな」 文&写真:吉村喜彦 2024.8.8 吉村 喜彦(よしむら のぶひこ) 印刷する 沖縄のコザに住む先輩から、 「このまえ山原(やんばる)に遊びに行ったからよ-」 とお土産をもらった。 山原というのは、沖縄本島北部、みどりの森の土地である。 いただいたのは、「グルクマくん」。 グルクマという魚の、味つけなまり節だ。 グルクマは、サバ科の魚。 かたちもサバに似ているが、体高がたかい。 鮮度が落ちるのが早く、脂がのりにくいため、あまり市場には流通していない。 グルクンは知っていたが、グルクマは初めて食べる。 この魚、沿岸を群れをなして泳ぎ、えさを食べるときには大きく口を開けるという。 その様子からヒントを得た「グルクマくん」のパッケージがなんとも可愛い。 国頭(くにがみ)漁業協同組合の大型定置網で水揚げされたグルクマを、 特製醤油のタレに漬け込み、 やんばるの琉球松を燃やして煙でいぶし、 カツオ節のように乾燥させて(焙乾)つくるそうだ。 化学物質無添加のヘルシーさも良い。 * * * さて。 同時に、先輩からは、沖縄本島最北端にある泡盛蒸留所・やんばる酒造の酒も頂戴した。 8割は地元やんばるで飲まれていると聞くと、ますます興味がわく。 熟成古酒「山原くいな KUINA BLACK」5年もの。 アルコール度数43度とラベルにある。 先輩は何も言わずこの酒と「グルクマくん」を手渡してくれた──ということは、この古酒と合わせなさい、ということだ。 「グルクマくん」をひとくち頬ばる。 燻香と醤油の甘さが口いっぱいに広がる。 見た目より、はるかに美味。 ふんわりとした風合。食感もよい。 すぐさま、「山原くいな クイナブラック5年熟成古酒」ストレートで舌を洗う。 おおっ! この古酒は香ばしい。 直火蒸留だろうか。 いい具合に焦げた香りがいい。 ぼくの好きなタイプの泡盛だ。 伊是名島の「常盤(ときわ)」や石垣島の「於茂登(おもと)に似ている。 このタイプの泡盛は、燻香に包まれた「グルクマくん」との相性抜群だ。 先輩はこのことを見越し、黙って、二つのおみやげをくれたのだ。 なんと粋なことだろう。 * * * 「クイナブラック5年古酒」は、 女房がつくってくれた昆布イリチーにもよく合った。 やんばるは山も海も近い。 海のものとのマリアージュは最高なのかもしれない。 やはり、泡盛は海洋性の酒なのだ。 あらためて、そう思った。 文&写真:吉村喜彦 漁協(JF)酒九州吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)1954年大阪生まれ。京都大学教育学部卒業。サントリー宣伝部勤務を経て作家に。 著書に、小説『バー堂島』『バー・リバーサイド』『二子玉川物語』『酒の神さま』(ハルキ文庫) 『ビア・ボーイ』『こぼん』(新潮社、PHP文芸文庫)『ウイスキー・ボーイ』(PHP文芸文庫) ノンフィクションでは、『漁師になろうよ』『リキュール&スピリッツ通の本』(ともに小学館) 『マスター。ウイスキーください〜日本列島バーの旅』(コモンズ)『オキナワ海人日和』(三省堂) 『食べる、飲む、聞く 〜沖縄・美味の島』(光文社新書)『ヤポネシアちゃんぷるー』(アスペクト)など多数。 NHK-FMの人気番組「音楽遊覧飛行〜食と音楽でめぐる地球の旅」の構成・選曲・DJを長年つとめた。 現在、月刊「地域人」で全国の漁師を取材する「港町ブルース」を連載中。このライターの記事をもっと読む
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