ニッポンさかな酒 秋田・酒さかな旅 文&写真:吉村喜彦 2021.11.25 吉村 喜彦(よしむら のぶひこ) 印刷する 先日、秋田の新政酒造にお邪魔した。 すべて秋田県産米を使用し、手間ひまのかかる「生酛(きもと)造り」、昔ながらの木桶で発酵させている。 江戸時代を彷彿させる酒造り。 そこから生まれるクリエイティブな商品は、まさに「温故知新」。日本酒の世界に新しい風を巻き起こしている。 山あいにある鵜養(うやしない)という村にも案内してもらった。この地で新政の原料となる米を無農薬で栽培しているという。 すずやかな清流の音が聞こえ、色づいた木の葉が舞う、桃源郷のような土地だった。 * * * その夜。会食会で「涅槃亀(にるがめ)」というお酒を飲んだ。 精米歩合88%。液体はほのかな黄金色をしている。この精米歩合は、江戸時代の最高精米歩合だそうだ。 新政の酒は爽やかな酸味に特徴があるが、この涅槃亀もそう。甘い日本酒は苦手だが、新政の甘みは、上品で、後をひかない。これは別格。淡い苦みも感じる。しっかりと腰もあり、キレもいい。飲んだ後に、すっと酒が消えていく。 ひとは別れ際がたいせつだが、酒もまったく同じ。 アフターテイストは、酒とのひとときの別れである。 酒と人とは、ほんとによく似ている。 秋田の海で獲れた平目としめ鯖とのマリアージュは最高だった。しめ鯖の酸味と新政の酸味とが深く響き合った。 * * * 翌日。市内にある秋田市民市場に行った。 なんとハタハタが出ている。アラもいる。 かつて佐渡でアラ漁師の取材をしたが、なかなか釣れなかった高級魚だ。繊細な脂が乗っていて、とても美味しかった記憶がある。 夕食どき、秋田市内のリバーサイド=川反(かわばた)繁華街にあるおでん屋に行くと、ハタハタ寿司がオンメニューされていたので、さっそくオーダー。 ハタハタ寿司は、麹を混ぜたご飯とカブ、ニンジン、柚子、昆布などと桶に詰められてできる「なれ寿司」だ。 ほどよい酸味、品のいいうま味とまろやかさ。これに合わせる酒は、十和田湖の南、秋田県東北端にあるまち=鹿角(かづの)の、千歳盛(ちとせざかり)上撰。さらりとした酒が、なれ寿司の酸味と甘みにほどよくマッチする。 山廃純米酒・飛良泉(ひらいずみ)も合わせる。 心地よい酸味がいい。飲み飽きず、腰が強く、がっしりと魚のうま味を受けとめてくれる。 店から出ると、遠い空から雷の音が聞こえてきた。 魚偏に雷で鱩(ハタハタ)。 もうすぐ、本格的なハタハタ漁の季節がやってくる。 文&写真:吉村喜彦 吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)1954年大阪生まれ。京都大学教育学部卒業。サントリー宣伝部勤務を経て作家に。 著書に、小説『バー堂島』『バー・リバーサイド』『二子玉川物語』『酒の神さま』(ハルキ文庫) 『ビア・ボーイ』『こぼん』(新潮社、PHP文芸文庫)『ウイスキー・ボーイ』(PHP文芸文庫) ノンフィクションでは、『漁師になろうよ』『リキュール&スピリッツ通の本』(ともに小学館) 『マスター。ウイスキーください〜日本列島バーの旅』(コモンズ)『オキナワ海人日和』(三省堂) 『食べる、飲む、聞く 〜沖縄・美味の島』(光文社新書)『ヤポネシアちゃんぷるー』(アスペクト)など多数。 NHK-FMの人気番組「音楽遊覧飛行〜食と音楽でめぐる地球の旅」の構成・選曲・DJを長年つとめた。 現在、月刊「地域人」で全国の漁師を取材する「港町ブルース」を連載中。このライターの記事をもっと読む
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四倉ホッキ貝と磐城壽 文&写真:吉村喜彦、写真:いわき市漁業協同組合(一部提供) 福島県いわき市は、ホッキ貝の名産地だと最近知った。 太平洋に面した四倉(よつくら)漁港で揚がるホッキ貝は絶品なのだという。 四倉では戦前から戦後にかけてホッキ貝漁が盛んにおこなわれていたそうだが2023.6.29ニッポンさかな酒吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)
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どぜうを食べに、浅草に 文&写真:吉村喜彦浅草吉原を歩きまわって身体が芯から冷えた夕べ。 からだを温めようと、かっぱ橋「どぜう飯田屋」に向かった。2022.2.17ニッポンさかな酒吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)
ギネスとフィッシュ&チップス 文&写真:吉村喜彦アイルランドのギネス・ビールが好きだ。 あの真っ黒な液体を見るだけで、飲みたくなる。 ギネスは、1759年ダブリンの醸造所で誕生した。 日本でいえば、寛政の改革で有名な松平定信が生まれた年である。2024.1.25ニッポンさかな酒吉村 喜彦(よしむら のぶひこ)