東大安田講堂でシンポジウム「里海保全の最前線」開催

JF全漁連と全国内水面漁業協同組合連合会、全国豊かな海づくり推進協会は2月11日、東京大学安田講堂でシンポジウム「里海保全の最前線」を開催しました。

このシンポジウムは、全国各地の海辺や川辺で環境保全活動などの「水産多面的機能発揮対策」に取り組む漁師や市民を中心としたグループが、これまでの活動の成果や課題について報告などを行うもの。
今回も新型コロナウイルス感染対策のため、会場参加人数を制限してオンラインと併用開催となりましたが、活動報告や専門家の講演を聞くために、多くの関係者が聴講しました。

※「水産業の多面的機能」とは、「美味しく新鮮な魚を安定的に皆さんに提供する」以外の「水産業がもたらす良い影響」のこと。
漁師や漁協は、海難救助や海浜清掃、藻場や干潟を守り海の環境を保全する活動などを行っており、住民や企業などと連携した活動に発展にしている地域もあります。

▶水産業の多面的機能とは?
https://sakanadia.jp/gyogyou/word_tamentekikinou/

基調講演は「脱炭素社会に向けたブルーカーボンの役割と今後の展開」がテーマ

基調講演では、国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター 社会・生態系システム部 沿岸生態系グループ長の堀正和氏が、脱炭素社会に向けたブルーカーボンの役割と今後の展開について講演しました。

堀氏は、国内外のブルーカーボンに関連した動きについて、「海産物は食料生産によるCO2排出が陸上よりかなり少ないため、世界中で大規模な海藻養殖が始まっている」と紹介。また、藻場と陸上植物のCO2吸収量を比較した結果について、「藻場は森林と同等。アマモは広葉樹やスギの人工林よりも高い。海藻養殖でも天然の藻場と遜色がない」と報告しました。その上で、今後について、CO2吸収源としての藻場を維持・拡大することや、海藻養殖のための技術開発の必要性を指摘しました。

5つのグループが活動報告

活動報告では、全国各地で藻場・干潟、サンゴ礁の環境保全、国境監視などに取り組んでいる活動組織の中から先進的、効果的な取り組みを行っている5つのグループが活動内容を報告しました。

【内水面生態系の保全】 
「市民・学生の協働で守る盛川の生態系」盛川の環境を守る会(岩手県大船渡市)
【国境・水域の監視、海の監視ネットワーク強化】 
「奥尻の海の安全と環境を見守って」奥尻地区海の監視活動組織(北海道奥尻町)
【藻場の保全】 
「葉山町の多様な主体が連携した海の森づくり活動」葉山アマモ協議会(神奈川県葉山町)
【干潟等の保全】 
「干潟の保全活動報告」美浜町漁場環境保全会(愛知県美浜町)
【サンゴ礁の保全】 
「サンゴ礁の里海づくり」恩納村美ら海を育む会(沖縄県恩納村)

▶発表詳細はシンポジウム資料でご覧いただけます。
https://hitoumi.jp/event/R4symposium_text-final.pdf

ディスカッション—あるものに目を向けて積極的な出会いを

最後に東京大学大学院農学生命科学研究科教授の八木信行氏がコーディネーターとなり、ディスカッションを行いました。参加者からの質問に回答したほか、6人のコメンテーターと活動報告を行った発表者が意見交換しました。

<ディスカッション>
■コーディネーター
八木 信行氏(東京大学大学院農学生命科学研究科国際水産学研究室 教授)
■コメンテーター
鹿熊 信一郎 氏(佐賀大学海洋エネルギー研究所 特任教授)
桑原 久実 氏 (元 国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 企画調整部門 研究主幹)
崎長 威志 氏 (広島県内水面漁業協同組合連合会 参与)
玉置 泰司 氏 (元 国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所 経営経済研究センター長)
藤田 大介 氏 (東京海洋大学大学院 准教授)
堀正和氏(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター 社会・生態系システム部 沿岸生態系グループ長)

▶水産多面的機能発揮対策情報はこちら
専用サイト「ひとうみ.jp」

  • JF全漁連編集部

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