【JF全漁連・ヱスケー石鹸トップ対談】JF全漁連・JF全国女性連ブランド天然石けん「わかしお」誕生50周年

※この記事は、2023年6月28日付の水産経済新聞に掲載されたものです。水産経済新聞社の許可を得て転載しております。

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JF全漁連・JF全国女性連ブランド天然石けん「わかしお」誕生から2023年で50周年となった。魚介類を育む海を守りたいという漁業者の思いに、石けん作りひと筋のヱスケー石鹸(株)が応えて生まれた「わかしお」について、発祥の地・千葉県出身である坂本雅信JF全漁連会長と、「わかしお」誕生に力を注いだ倉橋公二ヱスケー石鹸(株)会長が記念対談を行った。

対談したヱスケ―石鹸㈱倉橋公二会長(左)とJF全漁連坂本雅信会長(右)

—坂本会長 
JFグループで「わかしお」がこれだけ浸透したのは、漁協女性部のがんばりももちろんであるが、長きにわたり「わかしお」を作り続けてきたヱスケー石鹸のおかげだ。

—倉橋会長 
営業に配属され、最初に担当したのが「わかしお」プロジェクトなので私の思い入れも強い。誕生からきょうまでの50年間「わかしお」を使い続けてくれたJFグループには感謝の念に堪えない。

千葉発祥で全国区に

―倉橋会長 
千葉・外房の千倉町川口にあった川口漁協(現JF東安房漁協)が「わかしお」のルーツ。当時、近隣の漁協で始まった稚アワビ養殖で、初年度は成功したのに2年目以降はどうしても波板(波形の屋根材)に根付かず斃(へい)死する事例が続いた。原因を探る中、合成洗剤で波板を洗ったためではないかと思い当たり、石けんで洗うと無事に稚アワビが根付いた。

当時、都内の多摩川では汚染により泡が消えず、各地の海や湖沼で赤潮が頻繁に発生した。合成洗剤の誤飲や主婦の手荒れなどさまざまな問題が頻出し、合成洗剤を使わず自然にやさしく自然に返る石けんを使おうという機運が全国的に盛り上がった。

そうした時代背景の中で、石けんを作り続けてすでに半世紀の歴史があった当社が川口漁協と共同開発したのが「わかしお」だった。

―坂本会長
名前の由来は定かではないが、1972年に今の外房線が電化されて特急「わかしお」が走り始めたり、73年に千葉で「若潮国体」が行われたりと、当時は「わかしお(=大潮に向けて潮が若返る状態)」という言葉自体がちょっとしたブームだった時期と重なっている。

―倉橋会長 
「わかしお」は川口漁協から県全体へと広がったが、「千葉1県では駄目だ。全国で使用するべきだ」と、JF千葉漁連の熱心な担当者が全漁連の購買部に働き掛けてくださり、私もその場に同席した。「わかしお」がすでにあるならそれを全国ブランドにしようということになった。

使用推進運動の象徴

―坂本会長 
当時は全国のJFがまとまって公害による海洋汚染に立ち向かわねばいけなかった時代。そんな中で「わかしお」は、石けん使用推進運動の象徴になっていった。

また、当時の合成洗剤は手荒れが起きていたので、浜の母ちゃんも、環境だけではなく体にとってもよいものかどうかを真剣に考えた結果、「わかしお」が選ばれ、積極的に推進いただいてきたのだと思う。

「わかしお」が「目指す将来的な漁業のコンセプトに合っている」と語った坂本会長

―倉橋会長 
当時はプライベートブランド(PB)の依頼もたくさん寄せられ、石けんひと筋だった当社も、基本の粉石けんだけでなく、食器洗いやシャンプー、リンスなども自前で開発してきた。

PBは時代とともに数を減らしてきたが、「わかしお」がきょうまで残っているのは、海を守りたいというJFグループの強い思いと、当社内で「わかしお」誕生の経緯を私が熱心に語る中で醸成された「ブランドを存続させなければいけない」という雰囲気があったからだと思う。

持続可能性にも対応

―坂本会長 
誕生から50年で海の環境はだいぶ変わった。かつての公害問題は減少したにもかかわらず、漁業は厳しい状態が続いている。
現在は持続可能な漁業や未来につながる漁業が叫ばれるようになり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向かって漁業を続けていくことが大事になっている。「わかしお」はSDGsの取り組みに合致した商品だと改めて感じるし、JFグループでこれまで取り組んできた持続可能な取り組みの象徴そのものであると考えている。

人間が使うものは自然になるべく影響を与えないようなものを選び、漁業を守って次世代につなぐ。「わかしお」はその流れの中で見直されており、意識の高い若い世代にもそのよさについて分かってもらいたい。

―倉橋会長 
当社は持続可能性に関してはそれが唱えられる前からほとんどを実践してきた。近年では、輸入頼みの原料から国内の学校給食や外食産業から出る廃食用油に切り替え、その使用比率を高めた。また、国内製造にこだわり続け、輸送の環境負荷を減らしてCO2削減にも寄与してきた。

日本社会が縮小に向かう中、国内のものをうまく使用しながらものづくりに励むというのは、国内メーカーとして大事な視点と思っている。

最初に担当した「わかしお」への思いを語るのに熱がこもった倉橋会長

EC上でアピールも

―坂本会長 
きょうまで「わかしお」の普及に努めてきたJF全国女性連をはじめとした漁協女性部の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいだ。ただ、漁業者や女性部員の数が減ってきて、石けんを使用する方々も、石けんの推進活動に関わる方々も、絶対数が減っている実情がある。

漁協女性部やヱスケー石鹸の50年の取り組みに報いるために、まずはJFグループ役職員での「わかしお」使用を改めて推奨していくことが必要だと思う。その中でも全漁連が率先して、役職員での使用を推奨していく予定だ。

また、JFグループ各所でも電子商取引(EC)での直販を行うようになった。魚だけではなく、自分たち漁業者が持続可能な漁業に取り組んでいることの対外的なPRとして「わかしお」をサイト上で宣伝・販売し、魚を食べてくれる人たちに使ってもらうよう働き掛けることも検討したい。海の環境にやさしい天然素材の「わかしお」の利用を増やすために、例えば、全漁連のECサイト「おさかなマルシェ ギョギョいち」で販売するなど、50周年を機にこれからさまざまな取り組みをしていきたいと思っている。

石けんは実感が大切

―倉橋会長 
再度の決起を促すような坂本会長の力強い言葉を非常にうれしく思う。当時の担当者としてきょうまで生きてきて、今後さらに飛躍できる場面に立ち会えるとしたらこのうえない喜びだ。

ヱスケー石鹸も、われわれができる範囲でJFグループの取り組みのお手伝いをしたい。石けんの普及は、まず石けんが何なのかから始めること、また、使い勝手が合成洗剤と異なるので、「使って」「見せて」「実感して」もらうことが何より大事。研修会や勉強会も再開できる環境になったので、ご要望には極力応じていきたい。

対談終了後「わかしお」シリーズを手に記念撮影

■主な商品紹介■

「わかしお」の最大の強みは、「海の環境と体へのやさしさ」だ。SDGsが叫ばれる相当以前から、海を生活のよりどころにする方々が使用を推進してきた歴史がそれを裏付けている。

また、洗濯用や台所用、歯磨き・手洗い用、浴用までの生活シーン全般をカバーする多彩なラインアップも魅力だ。例えば洗濯用では「わかしお粉せっけん」から「わかしお洗濯用液体石けん」に人気の中心が移ってきていたり、台所用では「わかしお台所用液体石けん」のほか食器洗い機専用の洗浄剤もあったりと、現代の生活様式に合わせた商品を選ぶことができる。

浴用はシャンプーだけでなく、ボディソープやリンスまで揃う。お客さまの声に応えてヱスケー石鹸が独自開発して商品化した、努力の結晶だ。

使い始めは浴用石けんで

「わかしお」シリーズを使い始める際のお試し商品としてお勧めなのが、手洗いから洗顔・体洗いまで手軽に使える「わかしお浴用石けん」。もっちりとしたクリーミーな泡立ちが特徴で、女性や赤ちゃんの肌にもやさしい。

お試しで使いたい「浴用せっけん」。手洗い用にも

「ファミリーハミガキ」などの歯磨き粉も、合成界面活性剤入りの市販製品と違って刺激が少なく、歯磨き後に食べ物の味が変わらないことを実感できるため、石けんのよさを知るのにお勧めだ。

人に対する石けんのやさしさを実体験するのに最適な「ファミリーハミガキ」

※この記事は、2023年6月28日の水産経済新聞に掲載されたものです。水産経済新聞社の許可を得て転載しております。

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  • JF全漁連編集部

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