漁師の経営塾、7人の漁師たちの11日間

JF全漁連が浜の起業家養成塾を開講

修了証書を受け取った塾生たち

JF全漁連は、漁師専門の経営塾「浜の起業家養成塾」を1月20~31日に開講した。

昨年に続き、第2回になる今回は、異業種との連携などを念頭に、経営や起業化マインドに重点を置いたカリキュラムで実施した。

北海道から沖縄まで地元の漁業協同組合(以下、JF)の推薦を受けた7名の漁業者が、千葉県にある全国漁業協同組合学校に集まり、11日間寝食を共にしながら学んだ。

大切な気づき「自分で考えること」

講師は、水産経済やマーケティングの専門家、情報発信の実践者、先進的な取組をする現場の方々などさまざま。課外授業では豊洲市場の見学にも行った。

塾生たちは、立場によって多様な考え方があることを学んだうえで、「自分で考えることが大切だと知った」と口をそろえて言う。

プレゼンテーション、これからのビジョンを語りあう
真剣に仲間のプレゼンテーションを聞く

11日間の講義を終え、改めて地元の課題とこれからやりたいことをプレゼンテーションしあった塾生たちに、今の思いをインタビューした。

優良事例JFを目指して 内山貴仁さん(北海道・JF寿都町推薦)

35歳で公務員から転職し、北海道で漁師になった内山さん。北海道で小型定置と底建網を操業している。

漁師になって3年目、魚を捕るだけじゃなく次のステップに何ができるか、ヒントを得るために塾に参加した。

様々な立場の講師の話や、各地の事例を知り、漁師だけでの六次化には限界があることを知った。

「地元に帰ったら、生産、流通、小売が連携した取組をしてみたい。自分のJFがこういう場で優良事例として取り上げられることが目標」と語った。

見つけた本当の課題 寺尾拓弥さん(新潟県・JF佐渡推薦)

新潟県佐渡でカニ・エビかご漁を経営する寺尾さん。地元の現状を自分なりに考え、資源管理やマーケティングを学びたく塾に参加した。

ところが、実際に受講してみると、専門家の話や各地の事例から“自分たちはむしろしっかり資源管理ができている”ことを知った。

本当の最大の課題は“人材不足”にあることを知った寺尾さんは、どうやったら漁業従事者を増やせるかを考え始めている。

浜から日本、世界に広がる視野 小寺めぐみさん(三重県・JF鳥羽磯部推薦)

三重県菅島の海女である小寺さんは、「魚食の魅力を伝える、里海の暮らしを守る、愛される地域を創る」をミッションステートメントとして活動をしている。

塾では、地元だけでなく、日本、世界の漁業について知ることができた。偏った考え方ではなく、さまざまな立場の多様な考え方を知ることができたという。

双子の母である小寺さんは、「子どもらを家に置いて参加することに不安はあったが、次世代へ地域の浜を残すことに希望が持てた」と、仲間と高めあった日々を振り返った。

漁師という最強の肩書で 畳谷太地さん(兵庫県・JF明石浦推薦)

兵庫県明石市で底曳網漁業を営む畳谷さんは今回最年少。

所属するJF明石浦が講義の中で何度も優良事例として取り上げられたことを誇りに思いながら、漁師としてできる新たな取組も考えている。

塾では、講師たちがそれぞれの立場で異なる考え方を持っていることを知った。その考え方を知ったうえで「自分で考えること」が大切だということも学んだ。

「漁師という最強の肩書」で最大の課題「魚価の向上」に向けたアイデアをプレゼンした。

失敗も成功も事例から 西岡宏晃さん(高知県・JF高知推薦)

高知県室戸岬で新規就業支援事業を活用し、キンメ一本釣りの漁師の下で研修をしている西岡さん。

漁業のことを知りたくて、この塾に参加した。前職で営業の仕事をしていた西岡さんは、人を惹きつけるプレゼンテーションでこれからの夢を語った。

具体的な事例を、実際に取り組んでいる現場の方が話してくれた授業が印象的だったという。「失敗したことも成功したことも、実際にやった人から聞けた」

いよいよ来年自分の船をつくる。まずは漁の腕を磨き、この塾で考えたことを形にしていきたいという。

仲間と繋がりモチベ回復 坂本智彦さん(佐賀県・JF佐賀げんかい推薦)

佐賀県唐津で小型底引き網や籠漁業を営む坂本さんは、「人と同じことをしてては人並み」とこれまでも様々な漁業に挑戦してきた。

自分が漁業をやめてしまうと地域に漁師がいなくなるかもしれないという実態を目の当たりにし、地元を活性化させたいという。

仕事と趣味とが充実する環境をつくり若い世代を増やしたいと、地域のリーダーとしての夢を語る。

「色々やってきて心が折れかけたこともあったけど、塾に来て、仲間との横のつながりができて、またモチベーションが上がった」。

見えてきた、次の10年 屋比久健さん(沖縄県・JF金武推薦)

沖縄県でモズク養殖を営み14年目となる屋比久さんは、次の展開に向けたヒントを探すため塾に参加した。

若いころに何度か豊作貧乏を経験し苦しい思いをした屋比久さんは、順調な今こそ次の手を考えたいという。

ブランディングについて学んだことで、モズクがブランド化に向かないと考え、「販路拡大の可能性」に絞って次の展開を検討し始めた。塾を終えて、次の10年何をすべきか見えてきたという。

若い子たちに、自分のようなつらい思いをしてほしくない、と安定したモズク生産・販売を模索している。

7人の仲間との時間

何よりも一番の収穫は、11日間一緒に学び考えた仲間たちとの時間。「この仲間たちと繋がれてよかった」と、最終日、名残惜しそうに、みんなで食べる最後の給食を楽しんだ。

それぞれの浜に帰って、頑張ろう!!
  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

    このライターの記事をもっと読む