フィジー、その美しき海 ~ソソ村の青い海~

南国の楽園・フィジー

みなさんは「フィジー」という国名から、何をイメージしますか。青い海、白い砂、ゆったりした南国の時間・・・そんなイメージを抱く方も少なくないのではないでしょうか。フィジー西部の島々には、まさにそんな空間が広がっています。

今回、訪れたのはソソ村。フィジーの玄関口ナンディから高速船と小船を乗り継ぐこと4時間ほどの距離にある小さな村です。重たい鞄を肩からぶら下げた我々を、村人は温かく迎えてくれました。

ソソ村を訪れる

今回の目的は、ソソ村の概要を理解することです。それを踏まえたうえで、次回以降、漁業管理に焦点をあてた調査を行う予定です。

さて、フィジーの伝統的集落に入るには、村の責任者の許可を前もってとっておくことが必要です。実際に入村する際は、セブセブという儀式を執り行うことが大切です。

一連の儀式を終えた後、村の責任者は、村の人口は200名ほどであること、イモ類や魚を中心とした食生活であること、近隣のリゾート施設で働く村民も少なくないこと、国際的な支援団体が農業指導などを行っていること、毎年のように自然災害が発生することなどを語ってくれました。

村人の生活を安定させることがソソ村の課題であり、それを目指したいくつかの取り組みが行われているとのことでした。

フードバンクって何!?

ひとつめは、「フードバンク」とよばれる取り組みです。これは、村人が一緒に農作物をつくり、その売上金を貯蓄して災害発生に備えることを目的にした活動です。

Vinaka FIJIというボランティア団体の指導を受けて野菜づくりが行われています。雨季はキュウリ、ナス、キャベツ、バナナ、乾季は水をそれほど必要としないトマトやパクチーなどが育てられます。それらを近隣のリゾート施設や村内で販売します。

この日は、トマトの収穫が行われていました。その一部は、ひと山いくら、で村人へ販売されていました。ひとつ頂いてみました。う~ん、甘酸っぱい!そして歯ごたえがあります。ハウスものでは味わえない野性味あふれるものでした。

当初、村の男性陣が畑や売上金を管理していたそうですが、畑の管理は甘く、売上金の用途は不明瞭。業を煮やした女性リーダーの提案により、現在は畑も売上金も女性陣が管理しているのだとか!ソソ村でも我が家でも女性の方がしっかりしているようです。

日本の支援も大きく貢献

畑を管理していく上での課題のひとつは「水不足」でした。村には「日の丸」のステッカーが貼られた揚水システムと貯水タンクがありました。我が国のJICA(国際協力機構)による支援がソソ村に届いているのです。

村人によると、乾季の野菜づくりや飲料水の確保に大きく役立っているのだそう。「ありがとう!」と言われると、日本人としてとても嬉しい気持ちになります。

ルールを破ると大変なことに

生活の安定にむけたもうひとつの取り組みは、海洋保護区の設定です。

ソソ村は海に囲まれており、素潜りや釣りなどの方法で魚が獲られてきました。近年はスピアガンや刺網など、漁獲効率のよい漁具も用いられています。漁獲された魚は村人の大切なタンパク源としてだけではなく、近隣のリゾート施設へも販売されています。海は村人にとって食料と現金を確保する場として非常に重要なのです。

10年ほど前からソソ村では、国際的な環境保護団体からの助言を受け、海洋保護区を設定しています。そこでは特別な祭事を除き、漁獲は原則禁止です。一定海域での漁獲を抑制することによって、資源の再生産を目指しているのです。海外の研究者らによるモニタリングも定期的に行われています。

海洋保護区で魚を獲ると村独自の罰である「トトンギ」が下されます。違反者は村人の前で叱られ、村内の掃除を命じられるなど、不名誉で恥ずかしいことこの上ないそうです。

ソソ村づくしの料理を頂く

真面目に調査するとお腹が減ってきます。村人の御宅で遅い昼食を頂くことになりました。どの食材も村の畑と周辺の海でとれたものばかりです。

魚の煮付けもとても美味しかったですよ。調理方法は、綺麗な海水を汲んで薄め、その日に獲れた魚を入れて煮るだけ、好みにより柑橘類を搾ってどうぞ!なのだとか。とてもシンプルですが、シンプルが故に、魚の鮮度は誤魔化せません。

都会の小洒落た飲食店では決して味わうことができない、ソソ村づくしの料理の数々。こうなると、いつものように魚と酒の・・・をやりたくなるところですが、フィジーでは、伝統的集落での飲酒は御法度。村周辺でとれる葉を使ったティーとともに頂きました。

Jerryさん、Asenacaさんご夫妻と

今回はごく短期の滞在でした。「また、いつでもおいで!」と優しくおっしゃってくれたJerryさん、Asenacaさんご夫妻。お言葉に甘えてまたお邪魔したいと思います。次回は村に泊まってゆっくりお話しをお伺いしたいものです。

今回は南国の楽園のイメージにピッタリな「青い海」を紹介しました。次回は「豊饒の海」をご案内しましょう。我々フィジー調査隊では、どろどろの海と呼んでいます…

  • 鳥居 享司(とりい たかし)

    鹿児島大学水産学部准教授、NPO鹿児島おさかな倶楽部代表。   大学では、漁業経営の安定確保に向けた実証的な研究を行っています。漁業経営上の課題抽出とその緩和に向けた研究に力を注いでいます。   また、水産業界に貢献できる人材育成を目的に、ゼミ生とともに生産現場を訪れています。 近年は、国内はもとよりフィジーやマルタなど海外の漁業経営や資源管理について調査する機会にも恵まれています。   Sakanadiaでは、国内外の水産事情、それにまつわる小話などを楽しく紹介していきたいと思います。   大学を一歩離れると・・・趣味の世界が待っています。旬の魚と酒を求めた小料理屋探訪、食欲旺盛なボディを引き締めるべくジム通い、月2回の草野球、21歳を迎えた愛車との旅、一向に上達の兆しが見えないカメラ道、ほか多数。   また、旬魚の情報交換などを目的にした「鹿児島おさかな倶楽部」も主宰しています。Facebookには魚情報が盛りだくさん、是非、皆さんもご参加下さい。 鹿児島お魚倶楽部Facebook

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