魚と酒のマリアージュ~Pandoraと出会う~

魅惑の島国・マルタ

みなさんは、マルタ共和国という国を知っていますか?

イタリア半島から南へ行ったところにある小さな島国。人口は40万人ほど、半導体製造業や造船業のほか、観光業が盛んです。

首都バレッタは世界遺産に登録され、世界各国から観光客が訪れています。

周りを地中海に囲まれたマルタでは漁業も行われています。

マルタ島南部の港町・マルサシロックでは、色鮮やかな伝統的漁船を見ることができます。
漁船の周りには仲間と歓談する漁師さん、漁船に塗料を塗っている漁師さんなどがいます。

「こんにちは」と声をかけると、にこにこしながら返事を返してくれました。
刺網の許可をもっていること、この日の漁獲はまあまあであったこと、周囲のレストランへ出荷していることなどを教えてくれました。

マルタにも魚市場はあるのですが、レストランなどへ直接出荷する漁師さんも少なくないのだとか。

漁船に描かれた目玉の意味は!?

マルタの伝統的な漁船には「目」が描かれています。
マルタ国立水族館の説明によると、「目」は古くから守護の象徴だと考えられてきたようです。

エジプト人やその周辺の船乗りは、船の船首にシンボルである「目」を描き、航海の安全と魔除けを願ったそうです。

マルタ漁船の「目」も、その流れの可能性があるとのこと。へ~、勉強になるなあ。

朝市を闊歩する

港のまわりに人だかりが見えます。マルサシロックでは毎週日曜日、朝市が行われているのです。

生鮮食料品、生活雑貨、お土産、あらゆるものがリーズナブルな価格で売られており、地元の人はもちろん、観光客も一杯です。

水産物も豊富ですよ。ヘダイ、スズキ、シイラ、タコ、イカ、エビなど地元で漁獲された魚介類のほか、サーモンやムール貝など島外から運ばれたものもあります。

お客さんはそれぞれ好みの魚を指さし、処理をお願いしているようです。マルタでも日本と同じく、マルのままの魚は売れづらいそう。基本的な前処理は必須だそうです。

魚と酒のマリアージュ

さて、そろそろお腹が空いてきました。時計をみると11時半を過ぎています。お店が混み合う前に、ランチをとることにしましょう。

マルサシロックには魚料理を出す店がたくさんあります。迷ったあげく、地元の人からも評判の良いTa’ Mattewをお邪魔しました。

店員さんによると、この日のオススメはPandora。地元の漁師さんが獲ったものだそうです。

さっきの漁師さんが獲ったものかしら!?

では、オススメに従うことにしましょう。ちなみにPandoraはタイ科の魚で、地中海沿岸国ではお馴染みの魚なのだそうです。

しばらくするとPandoraの香草焼きを出して頂きましたよ。
冷めないうちに頂くことにしましょう。

ああ、とてもふんわりと焼かれています。
Pandoraのお腹には香草が詰められていますが、その主張はとても穏やかなもの。ですので、魚の味わいをよく感じられます。

地元の魚には、地元のワインがきっと合うはず。
果実の味わいと豊かな香りが特徴のマルタワイン・ISISとともに頂きましょう。

果たして、両者の相性はピッタリ、食い道楽の感はマルタでも冴えわたっているようです。

「地魚と地酒のマリアージュ」ですっかりシアワセ気分、最良の1日になりました。

次回はマルタ特産の「アレ」!

次回はマルタの魚類養殖について紹介しましょう。
皆さんがきっと好きであろう「アレ」がマルタで大量に養殖され、日本へ輸出されているのですよ!

  • 鳥居 享司(とりい たかし)

    鹿児島大学水産学部准教授、NPO鹿児島おさかな倶楽部代表。   大学では、漁業経営の安定確保に向けた実証的な研究を行っています。漁業経営上の課題抽出とその緩和に向けた研究に力を注いでいます。   また、水産業界に貢献できる人材育成を目的に、ゼミ生とともに生産現場を訪れています。 近年は、国内はもとよりフィジーやマルタなど海外の漁業経営や資源管理について調査する機会にも恵まれています。   Sakanadiaでは、国内外の水産事情、それにまつわる小話などを楽しく紹介していきたいと思います。   大学を一歩離れると・・・趣味の世界が待っています。旬の魚と酒を求めた小料理屋探訪、食欲旺盛なボディを引き締めるべくジム通い、月2回の草野球、21歳を迎えた愛車との旅、一向に上達の兆しが見えないカメラ道、ほか多数。   また、旬魚の情報交換などを目的にした「鹿児島おさかな倶楽部」も主宰しています。Facebookには魚情報が盛りだくさん、是非、皆さんもご参加下さい。 鹿児島お魚倶楽部Facebook

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