JFレポート 関係人口増加中!里海をまもる漁師と多様な組織の連携 ―シンポジウム「多様な主体の連携による里海保全」レポート― 2021.4.6 JF全漁連編集部 印刷する シンポジウム「多様な主体の連携による里海保全」オンライン併用開催JF全漁連と全国内水面漁業協同組合連合会は2月22日、東京・一橋講堂を配信拠点としてシンポジウム「多様な主体の連携による里海保全」を開催し、「水産多面的機能発揮対策」 に取り組むグループの活動報告とディスカッションを行った。 新型コロナウイルス感染対策のため、会場参加人数を制限してオンラインと併用開催となったが、全国各地の海辺や川辺で環境保全活動などに取り組む漁師や市民、企業など250人(会場約40人、オンライン約210人)が参加し、活発な情報交換の場になった。 ※「水産業の多面的機能」とは、「美味しく新鮮な魚を安定的に皆さんに提供する」以外の「水産業がもたらす良い影響」のこと。 漁師や漁協は、海難救助や海浜清掃、藻場や干潟を守り海の環境を保全する活動などを行っており、住民や企業などと連携した活動に発展している地域もある。 ▼水産業の多面的機能とは? https://sakanadia.jp/gyogyou/word_tamentekikinou/ ダッシュ海岸の木村尚さんが基調講演NPO法人海辺つくり研究会の事務局長でもある木村尚さんは、自身が行う東京湾の海づくりの取り組みを紹介しながら、多様な主体の連携による里海保全について講演した。 木村さんは「海の状態はなかなか伝わりにくい」という自身の経験から、多様なジャンルの人たちを巻き込んだアマモ移植会や東京湾大感謝祭などの取り組みを行っている。「『伝える』ためには多くの人を巻き込むこと。関わった人は自分のこととして考えてくれる」「相手がどう理解しているのかを感じ取るセンサーを持つことが重要」と連携の効果とポイントを述べた。 広がる市民・学校との連携活動報告では、多様な主体が連携して活動を行う4つのグループが登壇した。 ▼発表詳細はシンポジウム資料でご覧いただけます。 https://hitoumi.jp/event/R2_symposium_text2a.pdf ①海を「伝える」博物館と漁師の連携(三重県鳥羽市・浦村地区藻場保全活動組織) 海の環境を守りたいという「海の博物館」職員と、漁師のリーダシップにより立ち上がった活動。漁師と地域住民、消費者をつなぐ拠点として、博物館がアマモの大切さを「伝える」役割を担っている。 ②地域と協働したカリキュラムで地域愛を育む(愛知県・蒲郡市立西浦小学校・蒲郡市漁場環境保全協議会) 一過性の体験から脱却し、小学校1年生から6年生まで体系的に地域の海や漁業について学ぶことができるカリキュラムを構築。漁協などとの連携がスムーズになっただけでなく、学びの目的や意義が明確になった。 ③青年部と有志ダイバーの思いが地域全体の保全活動へ(徳島県海陽町・竹ケ島海中公園のエダミドリイシサンゴを守る会) 青年部やダイバーが始めたサンゴ保全活動からNPO設立へ。森・川・海をつなぐまちづくりをけん引してきた。ボランティアダイバーや地域おこし協力隊と連携し、サンゴ礁の保全や小学校の学習を実施している。 ④地域に見える活動で親しめる川づくり(鹿児島県出水市・高尾野川をきれいにする会) 川の漁師と地元住民らの組織で「高尾野川をきれいにする会」を結成。河川清掃や生態系保全の取り組みに加え、市教育委員会と連携して地元の学校を対象に漁村伝統食文化の伝承や出前授業などを行っている。 ディスカッション—あるものに目を向けて積極的な出会いを最後に東海大学関いずみ教授がコーディネーターとなり「多様な主体の連携」をテーマにディスカッションを行った。参加者からの質問に回答したほか、「連携するときの課題」について事例報告者やコメンテーターがそれぞれの経験から発言した。 コメンテーターからは、「連携する人が活動の意義を認識する教育・学習の機会が必要」「自分たちの活動の中で協力を求めたいことは何なのかを詰めることで、連携したい相手もわかってくる」など連携するときのポイントがあげられた。 また、このような活動を支援する水産多面的発揮対策事業(水産庁補助事業)が、地域連携を促し、水産業の地域における役割発揮を実現している成果を受け、今後もこの事業が続くことを期待する声も上がった。 コーディネーターの関さんは、「出会いに積極的に。そしてないものを求めるのではなく、あるものに目を向けてほしい。多様な連携は恋愛がうまくいく条件と一緒かもしれない」と締めくくった。 初の試みとなったオンライン併用開催のシンポジウム。チャット機能を使って多くの質問や意見が寄せられるなど、オンライン開催のメリットを生かした活発な情報交換の場となった。 <コーディネーター> 関 いずみ 氏(東海大学) <コメンテーター> 大浦 佳代 氏(海と漁の体験研究所 代表) 木村 尚 氏(NPO法人海辺つくり研究会 理事) 關口 寿也 氏(東京都多摩市立南鶴牧小学校 校長) 樋田 陽治 氏(元 山形県内水面漁業協同組合連合会、水産多面的発揮対策 連携推進検討部会 座長) <事例報告者> 浦村地区藻場保全活動組織 平賀 大蔵 氏( 三重県鳥羽市 鳥羽市立 海の博物館 館長) 蒲郡市漁場環境保全協議会 林 正人 氏( 愛知県蒲郡市 蒲郡市立西浦小学校 校長) 竹ヶ島海中公園のエダミドリイシサンゴを守る会 藤田 奈都季 氏(徳島県海陽町 海陽町 観光協会) 高尾野川をきれいにする会 高崎 正風 氏(鹿児島県出水市 高尾野内水面漁協 組合長) ▶JF全漁連の水産多面的機能発揮対策情報はひとうみ.jp JF全漁連漁協(JF)SDGs漁師JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む
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