カキじいさん20年の記録『汽水の匂いに包まれて』が出版

「森は海の恋人」の合言葉でおなじみ、宮城県のカキ養殖養殖漁師 畠山重篤さんの新しい本『牡蠣養殖100年 汽水の匂いに包まれて』(株式会社マガジンランド)が、このほど出版されました。

20年間の110編、カキじいさんのエッセイ集

本書は、JFグループの共済事業を担うJF共水連(全国共済水産業協同組合連合会)の機関紙『漁協の共済』(漁協職員向け)で連載された畠山さんのエッセイ集です。

『漁協の共済』でのエッセイ連載が始まったのは2001年4月。今も続いていますが、本書には2001~2019年までの約20年分、全110編が所収されています。

「森は海の恋人運動」をきっかけに、教壇に立ったり、世界に羽ばたいたりと、変化にとんだ「カキじいいさん」の人生がつづられています。

漁師の勘と科学が織り交ざり、時に厳しく、時に美しい漁業という仕事の本質も伝わってくる素敵なエッセイ集です。

驚いたのは、東日本大震災の被災真っ只中にもエッセイが途絶えていないこと。まさに震災当時の過酷な状況や、その時々の気持ちが生々しくつづられています。とても大切な記録です。

『漁協の共済』担当者の声

JF共水連 内田洋子さん

20年前、畠山さんに執筆を依頼し、今回の出版にも携わったJF共水連普及・研修部の内田洋子さんは、「好奇心旺盛で精力的な“カキじいさん”が繰り広げるワクワクする冒険を楽しんでいただきたい」と出版に込めた思いを話します。

文中のイラストは、孫の紘一さんが幼稚園のときから描いてくれているそうです。「紘一君の成長も楽しみの一つです」と内田さんはにこやかに教えてくださいました。

講演する畠山さん、JF全国女性連60周年記念講演(2019年10月2日)

畠山さんは、昨年度JF全国女性連の設立60周年記念講演で、「海のことを考えるときに、海だけ見ていてはだめ」とお話してくださいました。

今では漁師たちにとって当たり前となったこの考え方。発信し続けてきた畠山さんの思いがしっかり浜に浸透しています。

 

▶書籍情報
『牡蠣養殖100年 汽水の匂いに包まれて』
著者:畠山重篤
発行:マガジンランド
定価:1,500円+税
マガジンランド公式サイトからも購入できます

▶著者情報
畠山 重篤(はたけやま しげあつ)
1943年中国・上海生まれ。宮城県気仙沼湾でカキ・ホタテ養殖業を営む。NPO法人森は海の恋人理事長。
1989年、「森は海の恋人」を合言葉に漁民による植林活動を始める。
2005年より京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授。
1994年に朝日森林文化賞、2004年に河北文化賞、2012年に国連「フォレストヒーローズ」を受賞。
2011年の東日本大震災で養殖施設のすべてを失うが、直後から活動開始。東北復興をけん引している。
著書に、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)、『漁師さんの森づくり』(講談社)などがある。

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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