伝統のシロエビ漁でガッチリ稼ぐ【前編】富山湾のUターン漁師

富山湾のシロエビ「富山湾の宝石」

富山県射水市のJF新湊に所属する野口和宏さん(42歳)は、シロエビ漁と底引き網漁を操業する。京都の私立大学を卒業後、製造会社の営業職を経験し、30歳で実家の船に乗った。病気がちな父を支えながら乗組員として就業し、父の逝去をきっかけに38歳で独り立ち。生前の父と一緒に行った親方としての修行はわずか1カ月間だったが、持ち前のコミュニケーション力で先輩や仲間たちから技術を習い、腕を磨いてきた。

漁の腕もさることながら、漁師仲間から慕われ、漁連・JF、県の職員、研究者ともしっかり語り合う野口さんは、まさに新しい時代の漁師だ。

シロエビ漁を終えた野口さん、今期一番の豊漁に笑顔がこぼれる
日本のベニスと称される内川の町並み

伝統の港町で漁業を継承

射水市は富山湾の湾奥部に位置し、古くから漁業が盛んな地域だ。背後には「日本のベニス」とも呼ばれる内川の町並みシロエビは「藍がめ」と呼ばれるその急な海底谷に生息する魚種で「富山湾の宝石」とも称される。

JF新湊は射水市内の組合員388人を抱えるJFで、定置や底引き、シロエビ漁など来遊する魚種に合わせ多様な漁業が行われている。野口さんは、この地で代々漁業を営む漁家に生まれ、38歳の若さで父から家業を引き継いだ。現在は母、妻、二人の息子と内川町に暮らし、親方としてシロエビ漁、底引き網漁業を営む。

真っ暗な新湊漁港に野口さんの船「正㐂丸(しょうきまる)」

繊細なシロエビ漁

朝4時のまだ暗い新湊漁港。煌こう々こうと明かりをつけ出漁の準備をする野口さんの船「正㐂丸」があった。ブリッジに乗り込むと、野口さんの性格が表れるような整理整頓された室内に整然と並ぶ最新の計器類。30代〜50代の5人の乗組員を抱え、堂々とかじを握る野口さんの姿は、親方になってまだ4年目であることを感じさせない。

整然としたブリッジ、計器類でシロエビの動きを見ながら

しきりに無線で声を掛けてくる先輩漁師がいる。「厳しい先輩だけど、腕は本物。本当に尊敬している」と語る野口さんは、丁寧に無線の呼び掛けに答える。

漁場に到着しシロエビの魚影を確認すると、野口さんが出す合図とともに網入れ。網入れを終えた若手乗組員の一人が「ここからは親方の腕次第」と、期待にあふれる眼差しで野口さんを見つめる。

約40分間、野口さんは風や潮の流れを読みながら細かくかじを切る。網の水深を測る最新の機械を操作しながら、しきりにメモを取る。「エンジン音のちょっとした変化も聴いている」。富山湾海底の狭くて急な斜面に網をこすり付けないよう、細かくかじを調整しながら操業するシロエビ漁はとても繊細で緻密な漁だ。

上がってくる網をのぞき込み、「いい画が撮れるぞ」と表情を緩める若手乗組員。途端に正㐂丸が活気づき、朝日に輝くシロエビでいっぱいになった網が正㐂丸を左舷側に傾けた。

この日は今漁期一番の漁だった。水揚げ後、「後から入った船が自分よりも多く(シロエビを)持って来た」と悔しがる野口さん。だが、すがすがしい表情をしていた。

次回【後編】“漁師嫌い”から親方へ 「子どものころは漁師が嫌いだった」頼もしい親方としての野口さんの姿からは想像できない言葉だったが……

JF新湊のシロエビはここで食べられます!
JF新湊女性部食堂

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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