“雇用”と“自営”のくみあわせで収入安定&若手組合員増加! 宮崎県串間市東地区~「浜プラン」水産庁長官賞の紹介~

「浜の活力再生プラン」、通称「浜プラン」は地域ごとの特性を踏まえて、漁師や漁協(以下JF)、市町村などでつくる組織(地域水産業再生委員会)が自ら立てる取組計画。

その地域の人たちが自分たちで課題と解決策を考え、業界を越えた連携もしながら取り組む、ボトムアップの水産政策だ。

▼浜プランについてはこちらの記事で
大臣賞など決定!「浜プラン」で所得UP

今回は、基幹漁業の魚価・水揚げ金額をUPすることで働き方改革を実現した、宮崎県串間市東地区の事例を紹介する。
新規就業者も参入しやすい環境をつくった新時代の取り組みだ。
宮崎県串間市東地区は、昨年度の「浜の活力再生プラン優良事例表彰」で水産庁長官賞を受賞した。

浜プラン.jpコラムから転載▼
組織名: 串間市東地区水産業再生委員会
構成メンバー: 串間市東漁業協同組合(以下、JF串間市東)、串間市、南那珂農林振興局
地域: 串間市東漁業協同組合(沿岸漁業者87名)
漁業種類: はえ縄、曳縄、一本つり、磯建網、大型定置網、小型定置網、採介藻、その他

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▶串間市東地区水産業再生委員会の浜プラン詳細はこちら

地元漁業を支える「定置網漁業」

宮崎県最南端に位置する串間市東地区は、年間を通して温暖な気候。サツマイモやマンゴー、宮崎牛等の農畜産物、観光地としても有名だが、漁業も盛んだ。

多様な沿岸漁業が営まれているが、中でもこの地域の水揚げ量の約8割を占める重要な漁業が「定置網漁業」だ。
定置網には季節ごとに来遊する、ブリ、アジ、トビウオ、サバなど様々な種類の魚が入る。

今この定置網漁業に、若手の新規就業者が増えているという。
なぜ、市街地から遠く離れたこの地域に、漁業に従事する若者(移住者)が増えているのだろうか?

串間市東地区で実践してきた浜プランにそのヒントがあった。

「定置網漁業」を軸に、複合的な沿岸漁業のすすめ

串間市東地区の浜プランの取り組みの一つが、地域の基幹漁業である「定置網漁業」を軸とした働き方改革だ。

JF串間市東の漁師たちの多くは、雇用型の「定置網漁業」(従業員として作業に従事する)と、個人で船を持ち操業する自営の沿岸漁業を組み合わせた複合的な漁業経営を行っている。

そこで、JF串間市東は収入の基盤となっている大型定置の作業時間を当番制にし、漁師ら各自の自営漁業を計画的に操業できるような仕組みをつくったのだ。

例えば、ある漁師の一日を見てみると、午前3:30~5:30に大型定置の出荷作業を行い、その後午後0:00頃まで自分の船で刺網漁業を操業。午後は独自で加工品生産を行っている。

漁業者の操業スケジュール例  出展:令和元年度浜の活力再生プラン推進ブロック会議資料

定置は当番制で作業の日時が事前にわかるため、自営の漁業では計画的な生産が実現し、加工も含めた6次産業化にも挑戦することができた。

さらにJF串間市東は、漁師と水産加工業者のマッチングや、自治体と連携したPRを行い、漁師の6次産業化をサポートした。

この複合的漁業の働き方が功を奏し、若手が定着し始めたという。

魚価アップで「定置網漁業」を不動の基幹漁業へ

この働き方を実現するために肝心だったのが、軸となる定置網漁業がきちんと稼げていることだ。

JF串間市東では、定置の「水揚げ当番制」導入に加えて、漁獲される魚の価格アップとコスト削減に取り組んだ。

魚価アップのために行ったのが、水揚げ港の転換とマアジのブランド化だ。

水揚げ港を近隣の目井津漁港に拠点化することで数量確保と価格競争力がアップ。南郷漁業協同組合とともに、「めいつの魚ブランド化推進協議会」を設置し、「宮崎めいつ美々鯵(びびあじ)」のブランド化を実施した。

「宮崎めいつ美々鯵」には、厳しいブランド基準が儲けられ、鮮度管理が徹底されている。その取り組みの成果は価格に現れた。魚は生産量が多くなると値崩れすることが多いが、「宮崎めいつ美々鯵」は好漁でもその単価をキープ。ブランド化による価格形成力が証明された。

地道なコスト削減で地域漁業を底上げ

さらに、共同運搬船による輸送コストの削減も行った。そのほか、JF串間市東の漁師たちは地道で丁寧な仕事でコスト削減に取り組んでいる。

漁師たちは使用する漁船の減速航行や船底清掃を行い、船の燃費を改善。操業で使用する燃料の削減を行った。
また、使用する漁具(網やロープなど)の劣化を防ぐため、保管方法や使用方法を改善した。これにより、耐用年数の1.5倍使用することができ、漁具や資材にかかる経費の削減に成功したという。

第2期浜プランで“安定”を定着

これらの取り組みにより収入の安定を実現し、漁師が働きやすい環境を整えたことで、JF串間市東には新規の正・准組合員が10名加入した。30、40代の漁師も増え、中には移住者もいる。まさに、浜プランの実践が、地域の持続に貢献しているといえる。

串間市東地区の第2期浜プランでは、2021年中に開設予定の道の駅への出店や、漁業者による6次産業化(未利用魚・低利用魚活用)、ブルーツーリズムの活動等を計画している。

これらの新たな挑戦のために、第1期浜プランで実践してきた「複合経営」「省燃料・漁業資材節約」などの促進も行う。

働き方改革で漁師たちの個性や生き方が大切にされる串間市東地区。若手の力も加わり更なる躍進が期待される。

  • JF全漁連編集部

    漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebook

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