小浜島の街灯問題

マンタの形をした島

石垣島からフェリーで南下すること30分。ひらべったい竹富島を通り過ぎた先に、小浜島がある。NHK朝ドラ「ちゅらさん」のロケ地で有名になったことがある島だ。

海人公園にて、島のシンボル“マンタ像”
対岸の西表島に向かって細く突き出ている細崎集落

上から見ると、マンタのような形をしている。海に囲まれているのに、漁師は少ない。どちらかというと、観光で成り立っている島だ。大きなリゾートホテルがふたつ。その敷地面積は、島の3分の一はあるだろうか。

小浜島の漁師たち、手には大きな懐中電灯

さて漁師さん。マンタのしっぽの先に小さな集落がある。その名も細崎(くばざき)。そこに10人の漁師さんが肩を寄せ合って暮らしている。漁法は刺し網と潜水だ。刺し網を仕掛ける夕方、船に乗せてもらった。なぜか大きな懐中電灯を二つ持っていた。

西表島に日が沈むと真っ暗。はるか遠くに石垣島の灯りが浮かんで見える。あとはリゾートホテルの遠慮がちな灯りがちらほら見えるだけ。網を仕掛けて港に戻ると、なんと港の入口を示す誘導灯がない!漁師さんがおもむろに懐中電灯を取り出し、あたりを照らし出すと、岸壁が見えてきた。

その夜、島の居酒屋で議論になった。なぜ岸壁に灯りがないのか、なぜ島の中に街灯がないのか。

街灯がない道路が延々と続く

実は、細崎から宿泊しているリゾートホテルまでの移動に、漁師さんの軽トラをお借りした。港からホテルまでの道は、真っ暗!サトウキビやススキといった人間の背丈以上の高さの草が生い茂る細い道をひたすら行く。明るければなんともないだろうが、とにかく真っ暗だ。どこから、何が、いつ、飛び出してくるのかわからない。泣きそうになりながらとろとろとホテルに戻ったのだ。

「街灯はいらない」と大城洋一さんと比嘉誠さん

「小浜に街灯はいらない」「危ないだろう」--両者の議論は最後までかみ合わなかった。

帰りのフェリーで、海を見ながら考えた。結局、夜道で何にも出会わなかった。無事にホテルまで帰れた。安全運転だった。街灯って、やっぱりいらないんだと思った。

  • JF全漁連編集部

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