3年ぶりの対面開催「漁師の甲子園」第28回全国青年・女性漁業者交流大会をレポート 2023.3.31 JF全漁連編集部 印刷する JF全漁連は3月1日、2日の2日間、東京・千代田区のホテルグランドアーク半蔵門で「第28回全国青年・女性漁業者交流大会」(協賛:JF全国女性連・JF全国漁青連、後援:農林水産省ほか)を開催し、農林水産大臣賞のほか水産庁長官賞などの各賞を決定しました。 全国青年・女性漁業者交流大会とは?年に一度開催するこの大会は、全国の青年・女性漁業者が日頃の研究・実践活動の成果を発表する場であるとともに、参加者間の交流により知識や情報を共有・進化させることで、水産業・漁村の発展と活性化に資することを目的としています。 そして、水産業・漁村の発展・活性化のための技術・知識などを研鑽する場でもあるため、業界では「漁師の甲子園」とも呼ばれています。 また本大会は農林水産祭参加表彰行事でもあり、農林水産大臣賞受賞者は、来年度の農林水産祭天皇杯などの候補になります。 今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響が少しずつ緩和されてきたことから、3年ぶりの対面での開催となり、全国から集まった漁業関係者から久しぶりに顔を合わせた交流が行われたことについて喜びの声が聞かれました。 当日の活気に満ちた2日間の様子をここでレポートします! ●1日目:5つの部門、各会場に分かれて発表2日間のうち1日目は、全国各地からエントリーした漁業者たちが発表を行います。 大会には①「資源管理・資源増殖部門」、②「漁業経営改善部門」、③「流通・消費拡大部門」、④「地域活性化部門」、⑤「多面的機能・環境保全部門」の5つの部門があり、当日は各部門ごとに会場を分けて発表が行われ、それぞれの部門で3人の専門家が審査委員として審査を行いました。 各部門ごとの会場では、審査委員をはじめ来場者が発表に真剣に耳を傾ける姿があり、具体的な質問と応答も飛び交いました。 ●2日目:各部門の講評と農林水産大臣賞受賞作品の発表・表彰各部門ごとの審査委員からの講評&農林水産大臣賞発表2日目は各部門ごとの審査委員から農林水産大臣賞が発表され、併せて講評が述べられました。 農林水産大臣賞に選ばれたのはこちら↓ 農林水産大臣賞の受賞一覧▶他各賞の受賞を含め、特設サイトでもご紹介しています 質問や応答が活発に交わされた「意見交換会」農林水産大臣賞の受賞者5人を壇上に迎え、各発表に対し具体的な質問のほか、漁業全体に関する意見交換が行われました。 昨今の気候変動による水温上昇の影響についての質問では、磯焼けの問題、水温上昇によるワカメの生育不良や魚介藻類の種類の変化をリアルに体感しているという声などがあがりました。獲れるものが変われば、取引先や加工、用途、流通、あらゆるものが変わるものの、今後それらにも適応していく必要があると感じていることなど、環境変化への対応について意見が交わされました。 また女性活躍の現状報告や今後への提言をはじめ、各地域での資源管理の課題や対応事例について情報が共有さたほか、参加者から受賞者への具体的な質問があがり、全国各地の漁業者それぞれの現状を知る機会となりました。 ステージ上、左から荒木直子JF全国女性連会長、川畑友和JF全国漁青連会長、農林水産大臣賞を受賞した発表者の長山吉博さん、権田義則さん、斉藤貴浩さん、築城慎一さん、保志弘一さん川畑友和JF全国漁青連会長はIT技術を取り入れたスマート漁業についての発表に触れ、今回の発表事例をモデルに各地でスマート漁業が普及していくことへの期待を述べました。 荒木直子JF全国女性連会長は、「3年ぶりの実開催となり、各部門全体的に皆さんの発表を聞かせてもらいました。沿岸漁業でのITテクノロジーの導入など、新たなワードとして出てきている『海業』の取り組みに向けてもすばらしい交流大会でした。若くて力強い青年部の方と、経験豊富な女性連とで、これからの水産業を盛り上げていきたいと感じました」とコメント。 参加者から受賞者へ、事例に関する具体的な質問も投げかけられました日頃は全国各地で漁業に取り組む参加者らが、別の地域での優良事例を知ることで刺激を受け、地元でそれを取り入れ生かしていくことは、まさにこの交流大会の目的である「水産業・漁村の発展・活性化のための技術・知識などを研鑽する場」になっているのだと感じました。 全国水産・海洋高等学校生徒研究発表大会最優秀賞受賞作品の発表全国水産・海洋高等学校生徒研究発表大会最優秀賞受賞作品として、新潟県立海洋高等学校水産資源科資源育成コースの生徒さんが「地域特産品化を目指したキャビア生産に関する研究 ~DNA分析による雌雄判別法の開発~」と題し発表しました。詳細な研究手法やその成果に、現役漁業者を含め参加者らが真剣に耳を傾けていたことが印象的でした。 各賞発表&表彰式表彰式であいさつする坂本雅信JF全漁連会長農林水産大臣賞のほか、水産庁長官賞、農林中央金庫理事長賞など各賞が発表され、表彰状贈呈が行われました。 農林水産大臣賞受賞者の皆さん最後に審査委員長をつとめた東京海洋大学の馬場治名誉教授は次のように述べ、2日間にわたる交流大会は幕を下ろしました。 ▼馬場審査委員長による総括 久しぶりの(対面での)交流大会で、待ち望んでいた大会でした。 後継者難や高齢化などで女性部や青年部の活動が難しくなりつつある中、はたから見ているだけでは解決方法はなかなか思いつかないものですが、実際活動されている方の中から生まれてくるものだろうという視点で発表を聞きました。 JFとJAがともに産直活動を行う例や、高齢者が若者の意見を聞いて活動する事例、海のメンバーだけではなく山、谷、里のメンバーが加わる活動事例などもあり、同じ地域に住んで地域の活性化を目指すという点は同じで、消費者や学生、起業家を含めあらゆる分野の人がつながっていくことは、今後の活動のヒントとなるのではないかと思いました。 漁師さんたちがその地域で当たり前に取り組んでいることが、実は他の地域にとっては非常に新鮮に映り、興味を持たれ、参考になることがあります。ぜひそのようなことをこの発表の場に持ってきてほしいと思います。毎年この交流大会に来て、話を聞くだけでも、解決策やヒントが聞けて、元気になると思います。引き続き各地区の事例を、できる限りたくさんの発表資料を読んで、参考にしてもらいたいです。 馬場審査委員長による総括* * * ▶全国青年・女性漁業者交流大会の特設ページはこちら * * * Sakanadia関連記事 ▶漁師の甲子園「第27回 全国青年・女性漁業者交流大会」レポート―スマート漁業や漁農複合経営などが農林水産大臣賞に JF全漁連漁協(JF)漁師女性活躍青年部イベント女性部JF全漁連編集部漁師の団体JF(漁業協同組合)の全国組織として、日本各地のかっこいい漁師、漁村で働く人々、美味しいお魚を皆様にご紹介します。 地域産業としての成功事例や、地域リーダーの言葉から、ビジネスにも役立つ話題も提供します。 SakanadiaFacebookこのライターの記事をもっと読む